福島県教育センター所報ふくしま No.42(S54/1979.8) -002/034page

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学習指導小・中教材

国語科「表現」と「理解」の関連指導について

教科教育部  三津間 安宏


1.はじめに
 改訂学習指導要領によって問題提起された「表現力を高めるための表現領域と理解領域を関連させた学習指導の展開」は,現場の実践研究の課題として受けとめられ,移行期にあって,さまぎまな論議をよんでいる現状である。
 ちなみに,全国の研究動向をさぐってみても,昨年度の全国小教研東京大会・全国国語研究協議会山梨大会をはじめ,各地の研究報告書,研究雑誌等には,必ずといってよいほどこの関連指導がとりあげられ,問題になっているようである。本県においても,小教研のテーマに,中教研の研究の視点にあげられ実践研究の途上にある。
 そこで,この機会に,現場の実践研究の方途をさぐる参考資料になればと願いながら,次の4点について考察し,整理し,まとめてみたいと思う。
・ 関連指導とは何か,重視された理由と関連指導でめざすものは何なのか。
・ 考えられる関連指導の類型と研究の方向・視点にはどんなものがあげられるか。
・ 関連指導をする際の手順と方法・留意点は何か。
・ 関連指導展開例

2.関連指導が重視された理由とめざすもの
 新学習指導要領国語の第3,「指導計画の作成と各学年にわたる内容の取扱い」には,学習活動の組織と指導の関連について,次のように示されている。
 (小学校 第3の1の(3)中学校 第3の1)
小学校 「各学年の内容のA(表現)及びB(理解)については、適切な話題や題材を選定し A及びBに示す事項が関連的に指導されるように考慮するととも表現カと理解力が偏りなく養われるようにすること」  中学校 「指導計画の作成にあたっては,第2の各学年の内容のA及びB・言語事項について,相互に密接な関連を図りながら各学年にふさわしい学習活動を組織して効果的に指導するよう配慮する」
 この表現がいわゆる「関連指導」を示唆した部分であるが, 注目したいのは,関連させるのは活動(形態)ではなく各領域の指導事項(能力)であること。さらに「偏りなく効果的に指導する」という方法的改善のだいじな問題の一つとして関連指導が考えられているという点である。
 つまり,従来,生活単元学習等に見られた話題や題材を関連させた指導や,活動(読むこと・書くこと・聞くこと・話すこと)を関連させた指導だけでなく(むしろ,とちがって),国語による表現力と理解力とを関連させた指導(各領域の指導事項の関連を図った指導)としてとりあげられ,それが,「言語の教育としての立場を一層明確にして表現力を高める」に結びつく指導の方向ではないのかと述べられているのである。実践研究の出発にあたっては,この点の確認をしておきたい。そうでないと,研究会等では焦点がぼけ,また混乱してしまうことも予想されるからである。
 では,このような能力の関連指導が重視された理由はなんであろうか。種々の解説書をひもといてみると,いずれも「表現」・「理解」を関連させることによって指導事項が精選され,表現力の向上が期待できると指摘している。理由の一つには,授業時数の削減の中で,国語の学力を充実させ,ゆとりを持たせることは容易ではない。そこで,表現力をささえる理解カ 理解力を補う表現力という相補的な価値をだいじにするという観点から,指導内容を精選したり,関連させて指導することによって授業の質的改善を図っていく必要があることが考えられる。

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