福島県教育センター所報ふくしま No.42(S54/1979.8) -003/034page
(また示されている指導事項の中には,すでに理解・表現の学習の要素が混在しているものも各学年いくつかあることにも注意したい。)
さらには,どちらかといえば読解は読解,作文は作文といったセパレーツ型の指導にかたよりがちで,理解したことを表現に役立てるとか,表現学習で身につけた諸能力を理解学習に転移させるとか,そうした意識的な指導の機会を見逃してきたのではないかといった現場指導の反省から起こってきたこともあげられるのである。いずれにしても関連指導は,言語活動の特質からみても,一層の効率化を図る指導のためにも,最も留意すべき改善の問題点であるといえよう。
3.関連指導の類型と研究の視点
関連指導の類型に対する定説はないようである。
ただ,「関連」ということから考えられるものを整理してみると次のようになる。
1 「表現」と「理解」領域の関連
2 「表現」領域内の音声言語(話す)と文字言語(書く)の言語活動の関連
3 「理解」領域内の音声言語(聞く)と文章理解(読む)の言語活動の関連
4 「表現」・「理解」・「言語事項」の指導事項の相互関連。
また,関連指導という場合,
1 話題や題材などの内容の関連指導
2 読む・書く・聞く・話す言語活動の関連指導
3 表現力と理解力の能力の関連指導
の三つに大別できそうである。従って,上記をふまえた関連指導実践研究の方向・視点としては,
1 「表現学習を主にした関連指導」−作文の指導の中に読解を導入し,作文カを高める指導
2 「理解学習を主にした関連指導」−読解の過程に書く活動を導入し,読みを深める指導
3 「表現学習・理解学習が同等である関連指導」−読解を通して得た作文の知識や技能を作文に生かすなどして,読解カと作文力を同時に高めようとする指導が考えられる。(事例後記)
いずれの関連指導にしても,これからの研究実践で重要視されることは,技能・能力上の関連であろう。読みや作文で習得された技能・能力がいかに作文や読みの学習に生かされるかということである。これが,だいじな研究課題ではなかろうか。
4.「表現・理解」を関連させた学習指導の展開
それでは,どんな手順で,どのような方法で関連指導を考えていけばよいのだろうか。ここでは,「表現」の中の「作文」と「理解」の中の「読解」にしぼり,関連指導を授業にどう具体化するかという観点から指導計画作成を中心にまとめてみたい。
(1)まず,領域間の,関連できる指導事項の洗い出しをしてみる。中学校二年の説明的文章教材指導の場合を例にとってみると,要点・要約指導では,「理解」ア(内容は握と要約)と「表現」ウ(事実と意見・中心部分と付加的部分の表現)と「言語事項」のウ(文章論的事項)。文章の構成・展開の指導では,「理解」オ(組み立てや展開・文章理解)と「表現」エ(材料・構想)と「言語事項」のウ。要旨の指導では,「理解」のエ(主題や要旨のは握・文章理解)と「表現」イ(主題や要旨の明確化・表現)。表現・文体に関する指導では,「理解」キ(説明と描写,事実と意見)と「表現」カ(事柄の変化)ウ(前述)キ(表記の仕方)。また,「理解」ウ(語句の意味や語感と用い方)と「表現」オ(語句の選択と使用)と「言語事項」エ(語句・語い事項)オ(語い量事項)等である。
(2)つぎに,これらの指導事項をどのように関連させて指導するか考える。
1 複数の指導事項を同時的に行う。
2 ある指導事項を行うときに別の指導事項にふれ,後日の指導でこれを生かす。
3 ある指導を行うときに,既習の指導事項を活用し,習得を容易にする。
4 ある指導事項を行った後で,別の指導事項を関連させて行う。
(3)上記の指導事項をふまえて,指導目標・指導計画をたてる。(もちろん,ここに,教師の教材分析研究からの価値目標,さらに,児童・生徒の実態,レディネスは握からの到達目標の考慮が必要であろう。)
※ 指導計画作成にあたっては,関連指導のねらいを明確にする。これがはっきりしないと関連指導の効率がはかれないし,実践研究や実証的授業研究においても一般化が困難になる。以下,(1)〜(3)をふまえた場合の題材指導計画参考例をあげてみる。