福島県教育センター所報ふくしま No.42(S54/1979.8) -004/034page
(表現学習を主とした関連指導の指導計画例)
中学校2年 表現1「生活と感想」光村の場合,
◎ ねらい―「表現」のア・オ・クと「理解」のア・ウ・キ、さらに、「言語事項」(1)のア・イ・オと関連させ、(指導事項の内容表現は略・指導要領参照,以下同)表現を工夫して生活文を書かせることをねらいにした指導計画である。(全7時間)
(1)本文「表現を工夫して1」を読み,作文のねらいを確認させるとともに,身近かな生活の中から題材を選ばせる。―(1時間)
(2)読み手によく分かるように書くためにはどうしたらよいかを,例文「強がり」から読みとり,本文の構想メモを参考にして各自構想をたてさせる。―(1時間)
(3)各自の構想メモをもとに,生活文を書かせる。―(1時間)
(4)読み手に,生き生きと目に見えるように描写しているか,適切なことばで書き表しているかの観点から,自分の文章を推敲させる。そのために,本文「描写する」の例文1〜3を参考にし,教師が「表現を工夫するとはどういうふうにすることか」を教える。―(2時間)
(5)表記上の推敲の観点プリントを与え,グループ相互で表記上の推敲をさせる。―(1時間)
(6)発表会を持つ。提出させ評価する。―(1時間)
(理解学習を主とした関連指導の指導計画例)
小学校3年 童話「モチモチの木」光村の場合
◎ ねらい―「理解」カ・コと「表現」カ・クを関連させ,表現に即して人物の気持ちや場面の様子を想像しながら読ませるとともに.想像したことを書く力をつけることをねらいにした場合の指導計画である。(全8時間)
(1)全文を通読し,自由に感想を書いたり,話し合ったりする。(はじめの感想を書く。)―(2時間)
(2)場面ごとに,豆太やじさまの気持ちを読みとり,想像したことを書く。―(4時間)
1「おくぴょう豆太」の場面から,豆太のおくぴょうな様子を読みとらせ,豆太がおくびょうなのはなぜか,を想像して書かせる。―(書き足し)
2「やい木い」の場面から,表現「五つになって〜だめなんだ」をとりあげ,作者の立場に立ってわかりやすく書きかえさせる。―(書きかえ)
3「しも月二十日のばん」の場面から,モチモチの木を見たい豆太の気持ちとこわい気持ちを読みとらせながら,昔からの言い伝えを語るじさまの気持ちを書きこませる。―(書きこみ)
4「豆太は見た」の場面で,医者を呼びに行く豆太の気持ちの変化を書き出させ,じさまに対する優しい気持ちを読み味わわせる。―(書き出し)
5「弱虫でもやさしけりゃ」の場面で,最後のじさまのことば「お前は山の神様のまつりを〜」をノートに書き写しさせ,じさまの気持ちについて感想を書かせる。―(視写・感想)
(3)全文の教師範読を聞き,まとめとして,読後の感想文を書かせる。(終わりの感想)―(1時間)
(4)発表会と文字・ことばの練習―(1時間)
(表現学習・理解学習が同等である関連指導の指導計画例)
小学校6年 論説文「責任というもの」の場合
◎ ねらい―「理解」のコと「表現」のウを関連させ,筆者の論理の展開を読みとらせると同時に同様の論理展開の論説文を書くことができるようにする,をねらいにした指導計画である。(全9時間)
(1)全文通読,要旨の予想と学習計画―(1時間)
(2)「責任と義務」という観点から各段落の要点をおさえ,義務より責任の方がだいじだという筆者の考えを読みとらせる。―(2時間)
(3)筆者の論理の展開(1〜10段の相互関係,問題提示―例示―筆書の考え―理由―結論)をとらえさせ,文章構成図を書かせる。―(1時間)
※ ここまでが「読みとりの学習」である。
(4)角度をかえ,「権利と義務」という観点から論説文を書かせる。―(4時間)
1 権利と義務について,自分たちの生活体験をふりかえらせたり,辞書・参考書で調べたりして,中心となる要旨文を書かせる。(取材)
2(3)で読みとった文章構成図を使って,文章の組み立てを考えさせる。(構想)
3 簡単な論説文を書かせてみる。(記述)
4 論理の展開が明確かの観点から推敲させ,(グループ活動),清書させる。(推敲)
(5)全学習のまとめをする。―(1時間)
5.おわりに
従来も関連指導は強調されてきた(現行指導要領小・第3の4の(4),中・第3の2)。いまここで,表現力の向上を短絡的にとらえたり,関連指導の必要論にのみ引きずられて児童・生徒の実態をふまえない関連を考えれば,むしろ,それぞれの指導事項が不徹底に終わり,逆効果となりかねない。要は,より効率的な指導として関連指導が大切なのだから,深い教材研究(文章の研究・指導事項の研究・学習活動の研究・指導過程の研究)を前提として,関連させることが適切かどうかを考え,関連させる場合には,なにを関連させるか,どのように関連させるか等観点をおさえ,ねらいを明確にして関連指導の手だてを究明していくことが必要なのではないだろうか。関連指導を方法論としてのみとらえず,柔軟な態度で,授業をみつめながら,事例的実践研究をつみ重ねていきたいと思う。
6.参考文献
○小学校中学校指導書国語編(文部省)
○小学校新学習指導要領の解説と展開(教育出版)
○国語教育No.232,258(明治図書)
○改訂学習指導要領の展開国語科編(明治図書)
○中等新国語教師用指導書総説編(光村図書)