福島県教育センター所報ふくしま No.42(S54/1979.8) -007/034page

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 中流部は,下流部に較べて川の流れも速く礫も大きいので,裸地も多くなっている。
 不安定帯は50mぐらいあって,汀線から15mまでの砂地には,ススキ・オオイタドリの2種類の植物草丈低く疎(そ)生している。つぎに,15〜30mまでの礫地には植物がほとんどなく裸地となっている。
 さらに,30〜50mの礫地は梅雨時の増水による冠水で,7月には砂壤土,泥地ができて,ススキ,オオイタドリは1m以上に生育し,メヒシバの芽生えが多く見られた。50〜70mまでの半安定帯には幅5mほどの道路で裸地になっているが,富栄養化した砂壤土には,2m以上のイタドリ,ススキ,タニウツギ,ベニウツギが繁茂し,その下床にヨモギ,ヘクソカズラ,ヒメムカシヨモギ,アキノキリンソウ,アカマツなどが密生している。
 ここでも,下流部と同じく,ヒメスイバが7月には姿を消し,替わってメヒシバの芽生えが多く見られ,植物の季節的変化を知ることができる。
6.C地点(松川グランド)の川原の植物
 C地点は,東北線松川鉄橋の西約200mのところである。写真4がその全景で,その川原の断面と主な植物の植生のようすをスケッチしたのが図7である。図8は.線状測定の結果をまとめたものである。
写真4 C地点(松川グランド)の全景
写真4 C地点(松川グランド)の全景
図7 C地点の川原の断面と植生のようす
図7 C地点の川原の断面と植生のようす
図8 C地点の線状測定の結果
図8 C地点の線状測定の結果  

造成されたグランドのあまり踏まれない外野のところには,メヒシバ,ヨモギ,ムラサキ,ムラサキナギナタガヤ,コウライシバ,スズメノカタビラなどが見られ,たびたび草刈りが行われるので,草丈が低く同じ高さになっている。内野のところは,整地され,よく踏まれるので裸地になっている。ベンチの後方には,上述の植物のほかに,イタドリ,ススキなど草丈の低いのが見られる。堤防域は踏まれることがなく,富栄養化した壤土のため,オオイタドリ,ススキ,クルミなど草丈2m以上に繁茂し,その下床にヨモギ,フジ,ノブドウ,ヘクソカズラ,アズマサザなどが密生している。

7.おわりに
 以上,松川の川原の植物観察についてA,B,C三地点における川原の断面と主な植物の植生のようす,及びその線状測定の結果を述べてきた。
 川の下流と中流の植物の植生にも違いがあることや,同じ中流でも土地の状況(礫が主体か,砂が主体か,含水量と腐植質の有無など)によって,植物の分布,生育に違いがあること,このほかに洪水の影響を受けることも大きな要因になっていることがわかる。さらに継続観察により,植物の季節的変化を調べることもできる。
 このように,身近かな自然の植物を生きた教材として今後とも活用していただきたいものである。

(参考文献)
沼田真編,植物生態野外観察の方法,築地書館
宮脇昭編,原色現代科学大事典3植物,学習研究社
川名国男・市田則孝,河川の生物観察ハンドブック,東洋館出版
金田平・柴田敏隆,野外観察の手びき,東洋館出版
福島県,福島県史第25巻 自然建設編

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