福島県教育センター所報ふくしま No.42(S54/1979.8) -015/034page

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―生徒指導(その1)―

生徒指導の共通理解

経営研究部   原  洋 , 斎藤  健


〔問い 1]「生徒指導とは」と,一言で定義するとすれば,どう言ったらいいでしょうか。

答え 〕 「生徒指導」という言葉の概念については,「教科の指導は学習指導であるのに対し,教科外の指導は生徒指導である」(領域概念説) という考え方から.「生徒指導は学校教育のあらゆる場で行われる一つの教育機能である」(機能概念説)という考え方に変って来ています。
 学習指導要領には、中学校の総則に,「教師と生徒および生徒相互の好ましい人間関係を育て,生徒指導の充実をはかること」という記述があるだけで小学校,高等学校の総則には特に記述がありませんが,これは、生徒指導が学習指導に関係がないとみているからではなく、校内のすべての教育課程で生徒指導が行わわることは当然と考えているからです。
 「教育のあらゆる場」とは,校内における教科・道徳・特別活動の3領域はもちろん.校内における教育課程以外のすべての時間及び校外における指導も含むものです。
 法令用語で,小学校の「生活指導」とあるのは,中・高の「生徒指導」と同義語と解されますが,一般には「生活指導」という言葉は「生徒指導」より広狭さまざまの意味に用いられる多義的概念と言えるでしょう。

〔問い 2〕 生徒指導の意義をもう少し具体的におさえるとしたら,どんな点に留意すべきでしょうか。

答え 〕 文部省の「生徒指導の手びき」には,生徒指導についておさえるべき基本的事項として次の5つをあげています。
 1.生徒指導は,個別的かつ発達的な教育を基礎とするものである。(生徒指導は集団指導として行われる場合が多いが,その場合も集団の中のひとりひとりは異なることを前提とし,ひとりひとりの素質、能カ、適性,興味,進路希望や心理的発達段階,生育歴,環境の相違などを考慮して行われるべきであるということです。)
 2.生徒指導は,ひとりひとりの生徒の人格の価値を尊重し,個性の伸張を図りながら,同時に社会的資質や行動を高めようとするものである。
 3.生徒指導は,生徒の現在の生活に即しながら,具体的、実際的活動として進められるべきである。
 4.生徒指導は,すべての生徒を対象とするものである。(生徒指導は,問題行動のある生徒のみに行われるものではなく,健康な人格の維持発達という積極的な機能をはたすべく,すべての生徒に行われるもれである,ということです。)
 5.生徒指導は,統合的活動である。(生徒指導は,例えば、学業指導,個人的適応指導、社会性・公民性指導,道徳性指導,職業指導または進路指導,保健指導,余暇指導などの部面に一応分けることが出来ますが,生徒の人格の健全な発達をめざすための統合的活動としてとらえられねばならないということです。これは、人格そのものが統合的なものであるかぎり,その一面の指導だけに偏よれば人格の円満な発達を阻害することにもなりかねないからです。)

[問い 3] 生徒指導の究極のねらいはどこにあるのでしょうか。

答え 〕 高等学校・学習指導要領の特別活動の目標に,「望ましい隻団活動を通して,心身の調和のとれた発達を図り,個性を伸張するとともに,集団の一員としての自覚を育て,将来において自己を正しく生かす能力を養う」とありますが,ここで言う「自己を正しく生かす能力」の育成が生徒指導の究極のねらいと言えます。「自己を正しく生かす能力」とは.過去から現在,そして未来へと生きてゆく自分が,人生の行動や体験の上で.どのような変化が

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