福島県教育センター所報ふくしま No.42(S54/1979.8) -017/034page

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―教育相談(その1)―

テスト結果の効果的な知らせ方


―相談的なアプローチとして―

教育相談部  横  内  直  典


 学校で行うテストのねらいは,教師の立場からいえば,予期した指導目標に子どもが到達したかどうかを,個人的,または全体的にとらえたり,学習の歪みの傾向を知り,今後の学習指導に役立てることにあり,さらに,子どもに対しては,学習の進行の度合いなどを知らせ,学習活動を動機づけるという意味あいを持つ。
 しかし,テストがこのような教師の立場からする一面的な理解にとどまるならば,テスト結果を子供に知らせる意味あいは,教育的見地からは誠に稀薄なものとなってくるであろう。
 そこで,テストは,教師のためではなく,むしろ,主体は子どもの側にあることを,あらためて確認しておく必要もあろう。このような視点にに立てば,必然的に,子どもに対する教育的配慮のとどいた,効果的な「結果」の知らせ方の理解と工夫が生まれるであろう。
 テストを行ったあとの事後活動(この場合はフィートバックといってよいであろう)として,自己採点や自己評価による方法と,教師が採点して答案を返却する方法がある。いずれの方法を取るにしても,その中には,必す,自己確認と再学習への動機づけが効果的に行われることが強く要請されるのである。
1.自己確認
 答案を返却されたとき、テストの結果を知ることによって、子どもは、自分がどこの学習した事項について成功し、どこの学習した事項について失敗したかを確認することができる。
 学習を失敗したという経験は,既習学習のなかでの理解や記憶の不確かさを,自己確認させることになるものである。子どもが自分の誤りを自分で発見することは,現実の問題としてはなかなか困難なことであるがテストに失敗することによって誤りが確認され正しい学習がより強化されるものである。
2.動機づけ
 子どもは自分のテストの結果を知ることによって,その後の学習に好ましい影響を受けるものである。すなわち,その後の学習への意欲がおう盛になり,自発的に学習するように動機づけられる。
 そこで考えたいことは,教師としては,子どもの個々の能力を考えながら学習させ,成功の経験をさせてやることが大事であるが,実際の学習においては,常に,失敗の経験がつきまとい,これは避けることのできないものである。従って,失敗の経験が,その子どもを失意のどん底におとしいれないようにするため,失敗を,次の成功に結びつける工夫をしなければならない。これが再学習ヘの動機づけになるのである。失敗したときには,その課題の基礎となる問題を与えて,基礎的なものを十分に習得させるとか,適切なヒントを与えて成功に到達させるようにしなければならない。また,さらに,失敗してもすぐにあきらめてしまったり,投げ出してしまったりしないで,積極的に課題にたちむかって努力を続けていくような子どもにしてしいく必要があろう。
3.効果的なテスト結果の知らせ方
 教育心理学の研究や,多くの先輩からの意見を総合し,効果的なテスト結果の知らせ方をまとめてみると,次のようにまとめることができる。
(1)答案は教師自身がていねいに採点する。
 子どもはテストによって,自分の学習の結果が評価されることがわかっているので,まじめに答案を書いている。このことにこたえるためにも、教師自身が一枚一枚ていねいに採点すべきである。なかには,学級の,よくできる者に採点させるとか,交換して採点させるとかして,教師としての当然の仕事を,忙しいという「かくれみの」により,放棄している例もあるが,このことは望ましいことではないと考える。
(2)○印は大きく,×印は小さくつける。
 一般に,賞賛はしっ責よりも学習を動機づけるのに効果的であると,多くの学習心理学の研究で報告されているところである。
 答案に大きな○印をつけてやることは,強い賞賛を意味し,励ましになっているといってよいであろ

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