福島県教育センター所報ふくしま No.42(S54/1979.8) -018/034page
う。だから,○印は大きく,×印は小さくつけてやることが望ましいことだといえる。
(3)よい成績をとったときは必ずほめる。
よい成績とは,学級で一番になったことを意味するのではなく,個人内評価として考えた場合,個人として,以前より少しでもよい成績をとったことを意味する。このときの機会をとらえてほめることが,動機づけを高めることになる。
(4)できれば簡単な批評を加える。
単に○×をつけてやるのではなく,子どもの一人一人の努力に対して,その子どもに合った寸評を書き加えることによって,学習の動機づけを強化することができる。このためには,子どもの性格を十分知っており,その子どもにとって,どんな批評が効果をもたらすかを考えるべきである。
(5)答案は必ず返却する。
教師は多忙のあまり,点数だけを知らせてお茶をにごすことがままある。このようなことでは,子どもは正誤の自己確認もできないため学習に対する意欲も低下し教師不信におちいってしまうものである。
(6)答案は採点後すみやかに返却する。
正誤を即時知らせることは学習を強化させ,次の学習の素地が確立することになる。このことは心理学でいう「フィードバック」にとどまらず,フィードフォワード」の機能まで自然の形に導入していることになるといってもよいであろう。
(7)返却すると同時に簡単な講評と矯正指導をする。
テスト結果について,簡単に講評したり,学級全体として共通に誤っている問題は,全体として矯正指導をすることが,問題点を子どもに知らせることになり,定着の度合いもちがってくるものである。
(8)正誤をはっきりさせる。
正答が考え方のいかんによって,いく通りにでも解釈できるような問題を出すことはもちろんよくないことであるが,採点の結果に子どもが疑問を持つようなものは,問題として当然避けなければならない。このためにも,教師は普段の教材研究に意をそそぎ,あいまいな評価や評価の欠如等により,子どもが学習に対して,無関心・むとんちゃくにならないよう配慮しなければならない。
(9)答案の見方,うけとり方について,親のカウンセリングが必要である。
教育ママ的な親,満点以外の答案を子どもが見せると,「こんな成績ではだめしゃないの!」と言って,子どもの努力を認めようとしないという。
親のしつけが厳しすぎてもよくないし,放任的であってもよくない。親として,子どもが答案を持ちかえったとき,どう対処すればよいかについて適切なカウンセリングが必要である。
4.望ましくない,テスト結果の知らせ方
テスト結果の知らせ方の良否が,子どもの学習意欲を向上させ,又は低下させ,学習能率を増進させ,又は減退させることは,多くの研究ですでに明らかにされてきているところである。
そこで,望ましくない方法としてどんなものがあるかを考えてみたい。それは,前述の効果的なテスト結果の知らせ方の逆になると考えてよいので,箇条書に列挙するだけにとどめたい。
(1)答案を返却しない。
(2)汚ない採点のし方。
(3)「よくできました」などのスタンプ印だけの採点
(4)子どもに交換させて採点させたり,代表に採点させたりする方法。
(5)子どもの代表に答案を事務的に返却させる方法。
(6)全員の答案を壁にはり出す方法。
(7)誤りだけを重視し,よい成績をほめない。
(8)通知票につけるためだけの採点で,答案の内容を重視しない態度。
5.まとめ
テスト以前の問題として,教師は授業にのぞむ場合,当然のことながら,十分な準備,持に教材の論理構造と子どもの心理構造をよく配慮した「よくわかる」授業を準備しなければならない。そこで,よくわかる授業とは,「学習の目標が子どもにわかる」「学習の方法が子どもにわかる」「学習の内容が子どもにわかる」ことを含み,学習態度の側面からは,子ども自身が,「目的―手段」関係を明確にしながら,自分の問題として,身を入れて学習し,一つのやり方で失敗しても、くじけず,次々と新しいやり方を考え,進んで質問したり,調べたり,討議したりして,計画的・創造的に,ねばり強く進んでいく授業のことである。
このような授業のあり方を考えることにより,テストに対する教師自身の考えも変わり,おのずと,、相談約なアプーチができてくるものと確信している。
参考文献「学習意欲の高め方」辰野千寿 図書文化