福島県教育センター所報ふくしま No.43(S54/1979.10) -002/034page
小学校教材
算数におけるつまずきについて
教科教育部 佐 川 文 夫
1 はじめに
下の図は,当教育センターで作成した福島県標準学力診断検査問題(算数5年生用)の中の1間である。これは,斜線の部分の面積を求めさせる問題であるが,県平均正答率48%と予想より低い値を示した。解答を調べてみると,24cm 2 である子どもと15cm 2 である子どもと求めることができない子どもがいる。視覚的な目は同じであっても,三角形をとらえる数学的な目に違いがあるものと考えられる。すなわち,鈍角三角形としてとらえる見方や,直角三角形の一部分であることに目をつけてとらえる見方などに起因しているものと思われる。
なお.面積の求め方にしても
, ,DCの長さに気づかない子ども,BCを底辺とみて長さがわからず求められない子どもなど,さまざまである。1つの内容を理解したりつくり出したりする過程においても子ども個々によってつまずきの箇所と原因が違っている。しかし,この数多いつまずきも,総合するといくつかの共通点が発見でき,類型化が可能になる。つまずきの中身と原因を正しくは握することは大切である。この原因をは握する手がかりとして,算数の持つ特性とそれを受け入れようとする子どもの特性のずれが考えられる。これについては「2.子どもの特性とつまずき」で述べる。また,つまずきの具体的な事例と考察については,「3.つまずきの事例」で述べる。
2 子どもの特性とつまずき
子どもは,どのようを場合につまずきを起こすか,また,なぜつまずきを起こすか,子どもの特性が顕著である低学年と中学年のつまずきについて考察してみよう。
(1)低 学 年
子どもの特性 つ ま ず き 言語による表現・能力が不完全で,読解力もふじゅうぶんである。 「5から3をひく」というとき,「ひく」を減法の意味と「車をひく」,「線をひく」などの意味と混同する。 具体物の直感や具体的操作を通して学ばせる。 言語能力が未成熟で,ことばや文章を通しての間接経験では理解しにくい。 思考が自己中心的で,その表現には客観性が欠ける。 「11月30日から,12月3日まで,何日ありますか」に対して「 30日の日 +3=4日」とする。 思考が特定の場にとらわれて,全体的な場をとらえたり,一般化することが困難である。 何本かの棒を与えて,長い順に並べる場合,2本ずつくらべないと長さのちがいが分らない。全体を同時にくらべ最長のものを選びだせない。 直接結果を求めようとして,思考過程を反省したり,逆思考を用いることが困難である。 みかんを3個たべたら,あとに5つ残りました。みかんははじめにいくつあったでしょう。
□−3=5