福島県教育センター所報ふくしま No.44(S54/1979.12) -005/034page
中学校教材
電気教材における教具の研究と製作
−整流・平滑波形観察装置(仮称)の製作−科学技術教育部 引 地 善 美
1.はじめに
新学習指導要領の技術系列,電気II の指導内容の中に「(1)増幅回路を用いた装置の設計について,次の事項を指導する。イ.電源回路と増幅回路の仕組みを知ること」と明確に示されている。
ところが,現在教材としてとりあげられている題材は,増幅器の学習であり,電源として乾電池が多く使われているとすれば,交流から直流に変換する電源回路の学習は,軽く扱われ,場合によっては,製作に直接関係がないことから,指導時間の不足を理由に実際の指導がなされないことも予想される。 また,増幅回路の学習で,増幅の段数を1〜2段程度にして,題材を構成し指導したとき,ダイオードの学習が実質的に薄れる傾向がでてくる。電気IIの学習の中で,トランジスタと共に,ダイオードの果たす役割は極めて重要であり,基礎的,基本的事項として重点的に指導する必要がある。
これらの指導を効果的にするには,適切な教材教具を活用し,視覚を通して,生徒の興味と関心を高め,理解をたしかなものにすることが重要であると考える。
本装置は,ダイオードを使用し,整涜,平滑の電源回路のしくみを,波形として直接目でとらえさせ電気学習を一段と充実させることを,ねらいとして製作した装置である。
なお,この装置のしくみと製作の方法について,紀要33号(昭和53.3,発行)で,紹介ずみであるが,その後,多くの先生から好評を得た反面,一部に使用しにくいとか,しくみがケースに内蔵され観察ができない等の指摘があったので,それらを一部改良し,より使用しやすくしたので再度紹介することにした。2.装置の製作
〔1〕製作のねらい
(1)スイッチの切り換えだけで,4つの波形(正弦波,半波,全波,平滑波)がオシロスコープで観察できる。
(2)整流,平滑のしくみが,ケースの外から観察できる。また,どの回路が働いているかネオンランプの点滅によってたしかめることができる。
(3)電源の人力,半波整流,全波整流(ブリッジ方式,センタタップ方式)の回路と,平滑回路を三色のアクリル板を使用し,わかりやすく配置し観察しやすくした。
(4)全体を一つのケースにまとめ,保管,移動が簡単で使用しやすくした。
写真1 製作した装置
○ 指導できる具体的内容
- 整涜回路の半波と全波回路の相異。
- 全波整流回路のセンタタップ,ブリッジ方式のちがいとはたらき。
- 平滑回路のしくみとはたらき。
- ダイオードのしくみとはたらき。
- コンデンサの容量のちがいと平滑波形。
- 切りかえスイッチの操作による構成上の相異。