福島県教育センター所報ふくしま No.44(S54/1979.12) -009/034page
学校経営
学校教育目標具現化の視点
−経営研究報告書の分析−経営研究部 佐 藤 幸 雄
学校経営(A)講座には,52年度までに226名の教頭が受講し,その中の30%にあたる68名の先生が「学校教育目標の具現化」の研究に取り組み,報告書にまとめている。そこで,これらの報告書を基に,どのような方策が学校教育目標の具現化に有効かを吟味してみる。
1. 学校教育目標具現化の問題点
学校教育目標は,学校の全組織をあげ,全領域の具体的実践を通して達成される。経営の面から言えば,学校教育目標やその他の具体的目標の設定を中心とする計画過程,それを受け実践する過程,更には評価過程のいわゆるP・D・Sのサイクルとしてとらえることができる。学校経営の中軸は「目標具現の過程」であると言われるが,一般的に学校教育目標と教育実践の間には,有機的関連が薄くなる傾向が指摘されている。この要因を報告書から明らかにしてみると図1のようになる。
図1 研究報告書にみる問題点
図1は,研究の前提となる「自校の現状(実線で囲んだもの)」と,研究後の「今後の問題点(点線で囲んだもの)」を発想法の手法でまとめたものである。図1を見ると,目標設定から評価,組織運営などの多方面にわたって問題点が指摘されている。ただし,短期間の研究という制約があるためか,施設・設備予算といった面からの指摘や学校教育目標と毎日の授業とのかかわり合い等の指摘は見当たらないようである。
問題点をもっと絞るために図1をグラフ化してみると次のようになる。
図2 学校教育目標具現化の問題点
(S46〜52,N=55人)
図2によると,「教育目標の具体化」「教育目標の評価」「共通理解・意欲」とこの三つが群を抜いており,ここに問題が集中している。
「学校教育目標の具体化」について,牧昌見氏は「学校教育目標の具現化をはかるための最大の問題は学校教育目標の具体化にある。」(学校経営と教頭の役割10.206)と述べているように,目標達成のために「教育目標の具体化」はさけて通れない問題である。報告書の中の具体化に関する指摘の中で最も多かったものは「教育目標達成のための手段・方法が不明確」である。これは,目標を「ことば」で示すだけではなく,方策も同時に考慮されなければならないことを示していると言えよう。
「評価」については,「目標達成度が測定されていないlとか「評価・診断の方法がきまっていない