福島県教育センター所報ふくしま No.44(S54/1979.12) -022/034page

[検索] [目次] [PDF] [前] [次]

<アイデア紹介>

彫塑(頭像)のためのスケッチ
−チョークによる方法−

白河第二中学校  寺 嶋 鉄太郎

1. はじめに

 彫塑制作時の反省は数多くあるのだが,とりわけスケッチのさせ方に問題がある。スケッチの時間を一応はとってみるものの,意外に時間がかかるため,構想不充分のまま,粘土表現に入ってしまっている。このような問題を,いくらかでも解消するためにこの方法を考えた。
(1) 彫塑のための下絵に立体感を持たせたい。
(2) 鉛筆による下絵は時間がかかり,モデリングまでに及ばず,輪郭だけで終ってしまう者が多い実状を解消したい。
(3) 従来の白地(画用紙)に鉛筆で表現させる方法をとると,色を主にとらえる者がかなりいる。髪や眉,目,唇,さらにはホクロ等の表現に力が入る。このような絵画的な見方を,彫刻的な見方にかえさせたい。(どうすればよいか考えた。)

2. 特  色

(1) 材料はチョークである。これは幅の広いタッチを得られ,量感の表現が素速くできる。
(2) 黒地(黒画用紙)は白地に比べ,空間を感じさせる。(ひとりよがりかもしれないが,宇宙空間の黒とダブらせてみると,分かっていただけると思う。)
黒画用紙 黒画用紙にチョーク
(3) 白地に描くことでも量感や空間の表現はできるが,それをやるには抽象化する作業が加わる。
 (1年生などに彫塑のアイディアスケッチさせると「はじめから粘土でやりたい」と言う。これは平面に立体感をつくらねばならないという抵抗からと思われる。)
(4) チョークの強弱,つぶしなどは一種の空気遠近法を体験させることになる。
(5) 1のような現状を改善できる。

3. 材料

 黒画用紙,白チョーク,布
 フィキサ,チーフ,

4. 方法

頭像 作品 A 作品 B
A B

(1) 顔の立体感,量感,構造,比例について話し合う。
(2) チョークを軽く持って,黒画用紙に大まかに描く。(鉛筆は使用させない)
(3) 高い部分から描く。重ねがきし,少しずつ力を加えながら高さを出す。
 低い部分はチョークをつけない。
(4) 高い部分はチョークをつけたままにしておく。
 ・ 低い部分にチョークをつけた場合は指でつぶす。消しゴムで消してもよい。
 ・ はじめからつぶしの効果をねらわず,チョー クの強弱で凹凸の表現をするよう心掛ける。
(5) スケッチのあとにフィキサーチーフでとめる。
 ・ チョークが厚く着いている場合は,一度に吹きつけず,2〜3度に分けて定着させる。
(6) 明暗により立体感を表現しようとする場合も可とする(写真E)
作品 C 作品 D 作品 E
C D E

(7) 右の作品は,この方法を経験した後の,
白画用紙へのスケッチである。(写真F,G)
作品 F 作品 G
F G


[検索] [目次] [PDF] [前] [次]

掲載情報の著作権は情報提供者及び福島県教育センターに帰属します。