福島県教育センター所報ふくしま No.44(S54/1979.12) -026/034page
上記の構想に基づく協同研究の成果で得ることのできたものは概要次のとおりである。◎協同研究の成果(個の指導)
1.調査結果について
(1)病弱児の心理特性傾向
病弱児の多くは「欲求不満傾向」が強く認められる。そのため情緒が安定せず,不適切な言動の主要因をなしていると思われる。又,喘息児の多くはささいなことに欲求の阻害感をいだきやすい。
(2)知能・学習能力傾向
知能については,集団検査の時間制限法を使用した時は一般的にやや低くあらわれる。しかし個人検査法(ビネー,ウィスク)では普通児のそれと変わらない。
学力検査では病歴により学習の空白が認められる者が多い。基磯事項に欠けたり,学習の仕方のわからぬ者がかなりいる。
(3)生活・身辺の自立傾向
整理整とんができない。忘れ物が多い。洗顔・歯みがき,衣服の出入調節,服薬等他律的でごくありふれた身辺の所作の自立がはかれない子が多く,その様態も様々である。そのため病院生活や学校生活にかなりの支障をきたしている。
(4)心情面のあらわれ(観察記録より)
自己中心的で他人を思いやるやさしさに乏しい。創意くふうせずすぐに依頼しがちである。そのくせ依頼する人を信じきれないでいる。ささいなことに反攻的言動をとったりする子が多くみられ心理発達の遅れがうかがわれる。
ETC……………
2.「問題事項への対応」 →指導計画(指導要素表の作成)
1では概括的に述べたが個々の子によりその様態は様々である。それで個の児童・生徒に「どのようなこと」を「どのような場面」で「どのように」指導するかの骨子を指導要素表として作成した。(別紙参照)
その基本になることは,
○ 心理適応を図ること。・・・病弱児の養護訓練の重視
○ 子どもの発達課題をもとにした「心理学的適応理論」の実際的活用を図ること。
例えば,
・教師は子どもの言動を受け入れ適切な承認を与え子どもが教師を「自分を支え励ましてくれる頼りになる人」と感じることのできるかかわり方。
・子どもが苦しさに耐えて一つのことを成しとげる様子を温く見守り結果をともに喜び,そして考え,ほめ励ますかかわり方。
・そのためには,行動をうながす「質」と「量」と「方法」の適正化を図るようにすること。
などをもとにしている。しかし,個の児童を分析的にとらえ,個の状態に即応する指導要素をまとめたとしても,若いT教師,Y教師にとって直接的に役立たぬばかりか,課題の重大さに苦しみ,自信をなくし悩みを増大させたと先の調査の中では述べている。
それは,病弱教育の特質からの必要性に立ってその実務をとおし職性の向上を図ろうとしたことであり,それが,即新任教師の力とならないことを示しており,この六か月の過程では失敗を意味している。T教師,Y教師の当面している問題について考究し,それに即した現職教育への転換,又は考慮の必要ありと反省させられた。
- T教師,Y教師の当面していること。
ア.子どもが自分を教師として認め受け入れてくれていないのではないか。