福島県教育センター所報ふくしま No.44(S54/1979.12) -027/034page

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イ. 学習指導に自信がもてず,いつも不安である。
ウ. 自分の学級の子が,他の教師から問題視されることが多い。ほめられる子になってほしい。
………などである。

 T,Y両教師の求めているものは,病弱児の特質を知ることよりも先に,「教師として生の感動を生む⇔その指導と人柄」。
 それは,先の話合いの調査で「兎の目」という小説に感動していることでもわかる。この小説は教師と子どもが現実の生活問題に苦しみながらも互いにかかわり合い,共に変容を遂げていく様子を措いたもので,教育現場を素材とする感動的な小説である。そこに描かれた教師の愛,情熱,人がら,そして探究心,それに加えて忍耐と相互信頼の「巌」等教師なら誰しもが感動し同化したくなるものであった。
 筆者も後日それを読み,先輩教師としての自分の在り方に強く反省させられた。それは,教育は理くつではなく「子どもと大人,先輩と後輩の人間のからみ合い」であり,互いに教え合う営みであることが痛い程感じさせられたからである。つまり,人間の本質を忘れ「課題の追究はかくあるべき」と先輩の特権を振ったことは誤りであり,先に述べた「くいちがい」の原因をなしていると言えよう。
 T教師,Y教師の「先輩教師に勝るとも劣らぬ情熱に燃えている点」「余暇を有効に全力投入し,子どもに取り組める点」などを土台に,この教師なりの資質向上を図るべきであると反省させられた。

5.今後の問題

(1)T教師,Y教師の当面している問題に対応できるかかわりをとり入れる。

  1. 教材研究をともに行い,T教師,Y教師の考え方に即して,支持しながらこの教師の可能な最良の仕方の発見につとめるようにする。
  2. 日常の子どもの言動について,理くつでなくその本音を探り,実際の指導の仕方を助言して,その変容をこの教師なりに感動したり,考えたりできるようにかかわる。又,他職貞にもそうした応接を依頼する。
  3. T教師,Y教師の8か月余の成果に気づけるようにする。
     日常観察記録や第二次調査の実施と分析により「苦しみながらもこんな点に向上が認められる」というような実証をしていく。
(2)筆者自身の研究について
  1. 病弱児の「個人の生育と関連する問題児の指導」について事例研究をすすめる。特に「喘息児の生育と現在の言動」について詳しく追究し,指導の在り方を明らかにしていきたい。
  2. 現職教育の在り方を考え直す。
     今回の研究では,自分の考えや計画を知らぬ間に優先してしまい,その教師なりにどう伸びていくべきかなど他の人の立場に立って計画・実施できなかった。
     このことは,私自身の「人間性」に根ざすものであり,過去の生活に於いて同僚に及ぼした迷惑は計り知れないものがあったと推測できる。自分の行き方を変えることは「自己指南」という心理学的分野で筆者自身の研究領域でもある。
     困難は目に見えるが,同僚,その他の応援をえられるよう他との協調を図るべく努め,「先任者としての在り方」を学びとるようにして矯正につとめたいと考えている。

以 上


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