福島県教育センター所報ふくしま No.45(S55/1980.2) -002/034page

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小校学習指導

説明的文章読解の基礎的技能について

−中心文を見付ける、要点をまとめる、小見出しをつける−

 教科教育部  半 沢 正 一

1 はじめに

 「中心文を見付けなさい」、「要点をまとめなさい」、「小見出しをつけなさい」などの説明的文章読解の基礎的技能は、ふだん教室でなんの抵抗もなく用いられるようになり、教師間はもとより、児童・生徒の間にまですっかり定着した感がある。そこで、この機会に、これらの技能について、児童・生徒のつまずきや指導上の留意点などを、改めて考え直してみたい。ついては、本年度の小学校国語講座で、「説明的文章の指導」をテーマに取り上げ、受講者の先生方には、「スズメと人間」(光村・5年下)を教材として、「文章の研究」、「指導事項の研究」、「指導案の作成」などの演習を行っていただいたのであるが、その際、私なりに考えたことを、二三述べてみる。

スズメと人間


一(シカク一)
1.(マル1)スズメくらい、だれでも知っている鳥はあるまい。2.(マル2)むかし話やことわざにも登場するのだから、スズメは、かなり以前から日本人に親しまれてきたのだろう。

二(シカク二)
1.(マル1)現在、スズメは、商から北まで日本全国いたる所に住んでいる己しかし、スズメは、文字どおり「いたる所」に住んでいるのであろうか。

三(シカク三)
1.(マル1)少し山歩きをしてみればすぐに分かるが、村落の間を歩いているうちは聞こえていたスズメの芦が、そこを出て登りにかかると、すぐぐに聞こえなくなってしまう。2.(マル2)平地でも、たまごを産んでひなを育てる時期であれば、人家から数百メートルはなれると、スズメのすがたはほとんど見られなくなる。3.(マル3)秋にはもう少し遠くで見られることはあるが、それでも、人家から何キロメートルもはなれた所でスズメを見かけることはない。4.(マル4)スズメは、人家付近にしか住んでいないのである。

四(シカク四)
1.(マル1)このように、スズメは人間との結び付きが強い鳥だと思われるがそれならば、人家の教の変化によって、スズメの数はどのように変化するのであろうか。2.(マル2)わたしは、人家が少なくなるとスズメの数も少なくなり、人かげのたえた所では、スズメもやがてすがたを消すだろうと予想していたが、今まで実際に確かめる機会がなかった。3.(マル3)ところが・最近、ある学者の長年にわたる調査研究の結果から、そのことが明らかになった。

五(シカク五)
1.(マル1)長野県北部の雪深い地方のある山村では、この十年ばかりの間に人家の戸敦がどんどんへっていき、とうとう全員山をおりてしまった村落が六つも現れた。2.(マル2)すると、人家があったときには一つの村落に平均六十ぱもいたスズメが、一年後には一わもいなくなったというのである。

六(シカク六)
1.(マル1)一方、それまで人の住んだことのない所に、夏季のすずしさと冬季の積雪を利用して、観光地やスキー場が造られるようになった。2.(マル2)すると、そこに人が住み着き、新しい村落が出来る。3.(マル3)こうして出来たある村落には、十四世帯が定住したが、そのころからスズメはどこからともなく集まり、わずか二年足らずのうちに、六つのすが発見できたということである。

七(シカク七)
1.(マル1)この報告によって、スズメと人聞の結び付きは、見事に実証されたことになる。

― (以下略) ―


2 中心文を見付ける

「スズメと人間」の「学習の手引き1」に「要点をとらえるための手がかりは、各段落の中で中心となる文はどれかを見付けることです。例えば、第二の段落では、『スズメは文字どおりいたる所に住んでいるのであろうか』が、中心文です」とあるように、中心文を見付ける作業は、説明的文章読解上の大事な第一歩だといえよう。しかし、教科書は、中心文の例を示しているものの、中心文を見付ける方法については特にふれていない。ところで、児童・生徒が、実際に中心文を見付けようとするとなかなか容易ではないようだ。ちなみに、小学校国語講座においでになった40名の先生方に、E段落の中心文はどの文ですかとお尋ねしたところ、1.(マル1)文とした方が23名、2.(マル2)文とした方が17名と意見が分れた。このことでも、中心文を見付けることは、けしてやさしいことではないことがよく分かる。
 さて、中心文を見付ける方法としては、いろいろ考えられようが、結局、その文章や段落中の一文一文を、それぞれつき合わせ、どちらがより 中心的文 (筆者の言いたいことを最もよく述べている文)か、 付加的文 (筆者が言いたいことを述べるために、付け加えた説明・解説・補足・例示・そう入の文)であるかを吟味することが、最もオーソドックスで、的確な方法であろう。それでは、中心的文と付加的文と読み分け、区別する基準はというと、これといった明確な基準はない。そこで、試みに、未完成ではあるが、私案を示せば、下記のごとくである。

〈中心的文(部分)と付加的文(部分)との見分け方〉

1 文と文との違連接関係から
(1)順接 (前後する二つの文で、一方が成立すれば、他方も成立するという関係)
 ・原因・結果の関係で違接している場合は、結果に当たる文(後文)が中心文
 ・単純な接統関係の場合は、前後どちらの文が中心文かは言えない。

[主な接続語]  したがって/すると/それゆえ/そしたら/それで/だから/ゆえに/そこで/それなら
(2)逆接 (前後する二つの文で、前文が成立すれば、後文は成立しないというものを、あえて連接させた関係)
 ・後の文が中心文

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