福島県教育センター所報ふくしま No.45(S55/1980.2) -004/034page

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で、恐らく中心文ではあるまい。3.(マル3)は、「ところで」という転換の接統詞に導かれ、「〜長年にわたる調査の結果から、そのことが明らかになった」と、2.(マル2)の「人かげのたえた所では、スズメもやがてすがたを消すだろう」という予想カ巧奮かめられたというのであるから、3.(マル3)を中心文とするのが適当であろう。ただし、3.(マル3)は指示語を含み、3.(マル3)だけでは「要点をまとめる」のに不十分なので、3.(マル3)の指示語の指示内容に当たる2.(マル2)の要点や、1.(マル1)の要点なども取り入れてまとめることが大切である。四(シカク四)の要点は「人家の数が変化すると、スズメの数も変化する。」である。

例3 四五六段落の文図

五(シカク五)六(シカク六)投落の「要点をまとめる」のは、例1、例2と比べると非常に難しい。それは、五(シカク五)六(シカク六)ともに解説説明・例示の文が並んでいるだけで、中心文らしい文が兄当たらないためである。しかし、の内五(シカク五)六(シカク六)容に回の内容と対応させ図示してみると、の五(シカク五)六(シカク六)「要点をまとめる」ことは、比較的容易となろう。
 すなわち、四(シカク四)は、「X『人家の数』の変化によって、Y『スズメの数』が変化する」という結論であるのに対し、五(シカク五)六(シカク六)はその具体例であるから、五(シカク五)では、「Xに相当する『人家の戸数』がへってゆくので、Y『スズメの数』が一わもいなくなった」という関係がとらえられ、同様に六(シカク六)でも、「X『新しい村落』が出来ると、Y『スズメ』がどこからともなく集まってくる」ととらえることができる。このような段落相互の関係が分かると、児童たちも容易に「要点をまとめる」ことができるだろう。五(シカク五)の要点は、「人家がなくなった村落には、スズメがいなくなる。」であり、六(シカク六)は、「新しく出来た村落にはスズメが集ってくる」となる。例1,2,3の検討から、「要点をまとめる」といってもけして一様ではないことが分かった。したがって、児童・生徒にはさまぎまなタイプの文章で練習させることが必要であろう。



4 小見出しをつける

 次に紹介するのは、小学校国語講座の一コマで、新採用の先生と経験者の先生との対話である。

問い  「小見出しをつける」ときは、どんなことに注意すればよいですか。
答え  各段落の中心文・中心語句を見付け、それらを中心にまとめたらいいでしよう。
問い  では、三(シカク三)段落の中心文は4.(マル4)だから、「スズメは人家付近にしか住まない。」ですか。
答え  「小見出し」ですから、それらしく文末は、体言止めにしてはどうでしょう。
問い  はい。「人家付近に住むスズメ」ではいかがですか。
答え  ええ。しかし、「人家付近に しか 」の「しか」を落としてはいけないと思います。
問い  そうですか。「しか」は、「しか・・・・ない」という呼応関係だからでしょうか。
答え  そうです。それに三(シカク三)の4.(マル4)は、二(シカク二)の中心文
2.(マル2)「スズメは文字どおり『いたる所』に住んでいるのであろうか」の問題提起に対する答で、「〜しか」は、二(シカク二)の2.(マル2)の「いたる所」と響き合い、「いたる所に住んでいるか」一「人家付近にしか住んでいない」という重要な意味を添えるので、どうしても落とせないと思います。
問い  すると、「人家付近にしか住まないスズメ」ではどうでしょう。
答え   たいへんいいと思います。

以上の対話でも分かるように、「小見出しをつける」際には、次のような点に留意したい。

 ア 各段落の中心文・中心語句を見付け、それを中心にまとめる。
 イ できるだけ端的な表現にするため、全体で、5字〜10字、長くとも15字程度が望ましい。
 ウ 文末表現は、原則として体言止めが望ましい。
 工 中心文だけでなく、その段落の文と文との連接関係も十分考慮する必要がある。
 オ 「小見出しをつける」段落だけでなく、その段落と他の段落との関係、その段落と文章全体との関係についても十分考慮する必要がある。



5 おわりに

「中心文を見付ける」、「要点をまとめる」、「小見出しをつける」などの説明的文章読解の基礎的な技能について、できるだけ具体的に例文に即して、問題点を考えてきた。な拾「段落」、「主題」、「意図」、「論述の態度」等にもふれたかったが、紙幅の都合で割愛した。いずれ機会を改めて述べてみたい。


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