福島県教育センター所報ふくしま No.45(S55/1980.2) -026/034page
イ、事例から得れた生徒指導の手だて
(6) 事例集から得た問題行動生徒の早期発見または早期指導のポイント
ア ふだんの心構え
(ア) 生徒の欠席、遅刻、早退によく注意し、特に月曜日や長期の休み明けの出欠状況に注意すること。
(イ) 心配な生徒の欠席の理由は直接親に求めること。
(ウ) 無口で孤立的で動作ののろい生徒こそ、ふだんから気をつけて観察しておくこと。
(エ) 無口な生徒との日常のかかわりを積極的にもつこと。
(オ) 無口で消極的な生徒の父兄面接などでは、特に生い立ち生育歴などをしらべておくこと。
(カ) 一浪や二浪の生徒に出現率が大きいから注意しておくこと。
(キ) 専門医を呼んで講話その他で、生徒と専門医とが直接気軽に相談できるような雰囲気をつくっておくこと。
(ク) 一人一人の生徒の好きな教師を知っておくこと。
イ 問題行動を示してきたとき
(ア) 教育相談の中で共感的理解が最も大切である
a、生徒の言い分に耳を傾ける。
b、多面的な原因をさぐる(基礎資料による)。
c、指導の仮説をできるだけ多くの教師でたてる。
d、気長に指導すること。
e、生徒にひきずられない指導をすること。
f、指導のための仮説は修正することも考えておくこと。
(イ) 登校拒否の生徒は、外からの刺激で再登校するのはまれで、本人の精神的な安定の回復がとにかく第一で、したがって急がず効果的な登校刺激を与えること。
(ウ) 本人だけでなく親のカウンセリングも考えること。
(エ) 再登校させる場合は条件整理をしてから迎えること。
(オ) 一度登校拒否した生徒を特別視しない周囲の配慮がたいせつ。
(カ) 専門機関と相談するときには慎重に。(とにかく専門医に診談してもらうことは大切だがやたら病院を紹介し、親や本人に不必要な不安や抵抗一を起こさせないこと)教育センター教育相談部とか、精神衛生センターなど、直接相談できる窓口があることも知らせておきたい。
(7) 教育相談ならびに事例研究の成果
問題行動の生徒の早期発見や予防ができたかどうかという資料はない。しかし、次のような成果がみられたことは、主題へのアプローチができつつあると考えている。
ア 複数の教師による割列研究的相談体制がととのいつつある。
イ Y・G性格検査、悩みの調査などの基礎資料を学校全体のスケールで実施するようになった。
ウ 基礎資料を相談活動の中に活用しるようになった。
工 専門機関との連絡や連携がスムーズになった。
オ 研修会に出るようになった。
カ 教師グループによる学習会が開かれるようになった。
キ 教科担任懇談会(約3Q名から成る)が校内事例研究会的性格をもちつつある。
ク 底辺に低迷する生徒の一人ひとりに、以前に増して温かい目がむけられてきた。
おわりに、
進学校といわれている本校では、教科指導が第一義的に考えられ、ともすると一人ひとりの生活指導に心を配ることが少なかったのではなかろうか。実態調査にもあるように、青年期の生徒はいろいろな悩みをかかえている。今回の研究を通して、生徒の本当の姿が見えるようになって来たといえるし、教育相談および事例研究の窓口が、より確かな形で開かれたともいえる。これらの研究をもとに、生徒一人ひとりの心の健全な育成のために、校内一致して援助の手をさしのべねばならぬことをあらためて知らされたのである。それが研究指定校としての最も大きな収穫であったと思われる。
(文責 蓬田道郎)