福島県教育センター所報ふくしま No.46(S55/1980.6) -009/038page

[検索] [目次] [PDF] [前] [次]

小・中学校教材

「 地 層 の 観 察 」の 指 導 

 − 野外観察指導資料 −

 科学技術教育部  入 道  正


1 はじめに

 新しい学習指導要領の改訂の趣旨をいかし,理科教育の目標に,小学校では「自然を愛する豊かな心情を培う」が新たに加えられ,中学校では「自然と人間のかかわり」が強調された。
 これらの目標達成の方法は,児童・生徒がみずからまず多様な自然にじかに接し,みずからの体や頭を使って自然を探究し,自然から学ぶという理科学習の原点にたちかえることである。
 野外での地層観察,川のはたらきの観察学習は,児童・生徒にとって,自然にふれ,自然に親しみ,自然を正しく理解する大切な教材でもある。


2 学校周辺の地層の教材化

 地層は地球のおいたちの歴史の証人と言われている。それは大昔の有史前の地球上で起こったできごとのすべてを,地層はこく明に記録し,保存しているからである。
 この地球のおいたちの歴史の証人である地層から,どのようにしたら正しい過去の証言を引き出せるだろうか。それは地層に秘められている各種の謎の符号を地層の観察を通して,いかに正しく読み取るかにかかっている。
 地層のでき方については,小学校4学年では「流水のはたらき」の教材を通して,石や土が積もって川原のような広がりをもつものができることを理解させ,6学年では,これらの経験を基にして,近くで地層が見られるがけを観察し,地層が積み重なってがけをつくっていること,また,地層には広がりがあることをとらえさせ,地層をつくっている物を手がかりに,地層は水のはたらきで長い年月をかけてできたことを理解させるよう小学校では教材配列されている。
 この地層に関する教材は,さきの流水のはたらきに関する教材と同様に,児童・生徒の正しい自然観を育てると同時に,時間的,空間的なものの見方,考え方を育てる教材である。


3 野外学習実施の手順と留意事項

1) 岩石や地層観察の露頭を選定する
 岩石や地層が地表に露出している所を露頭というが,野外学習の効果を上げ得るか否かの決定的要因は,観察する露頭の選定にかかっているので,充分時間をかけて下見をする。
1.  2〜3時間続きの授業を計画し,往復に1時間、観察に1〜2時間を目あてにする。
2.  学校から露頭までの交通事情や,観察場所での安全性を事前に調べておく。

2) 露頭の観察は,まず,露頭から離れて全体の模様,関係をよく観察する。
1.  目の前の露頭は,ほんとに地山のものか,地すべりやがけくずれで,二次的にたい積したものでないかどうか見分けることが大切である。
2.  露頭が地山のものであることを確かめたら,露頭全体が見通せる所に立って,露頭の全景をスケッチする。その際,地層の重なり方(整合・不整合関係),地層の色,葉理,断層など気付いたことを書き入れる。
3.  また,がけに見られる露頭の大きさや,地層の見かけ上の厚さなど,拾よその教値を入れる。
4.  この露頭のある高台やがけは,これらの地層が積み重なってできていることを理解する。

大川ライン 塔のへつり
大川ライン 塔のへつり

5.  道路沿いに露頭が続いている場所や,地層の対比ができる場所では,地層は横に広がりをもっていることを理解する。

3) 露頭に近づき,そのつくりや特徴を調べる。
1.  露頭の全景をスケッチしたとき,区分したそれぞれの地層(単層)について,岩質を調べ,粒の特徴から粘土層,砂層,凝灰岩層等に分ける。ま


[検索] [目次] [PDF] [前] [次]

掲載情報の著作権は情報提供者及び福島県教育センターに帰属します。