福島県教育センター所報ふくしま No.47(S55/1980.8) -004/034page
●地球儀をまわして半球部分が陸地の多いところ と,海の多いところに分けて,睦半球(中心はほ ぼパリ付近)と水半球(中心はアンチポデス諸島) に分けられることに気づき,日本はその境目にあ ることをとらえる。
●地球儀を机の上に置いて,だいたい東京の真上 に目をおいて視界にはいる範囲をノートに略図で 描かせ,日本を中心とした半球のようすをとらえ る。略図を描かせることによって,わが国の位置 関係を印象的にとらえる。
(2)四方位の物差しを作り,方位で世界の国々の 位置関係をとらえる。
●2本の紙テープを地球儀の円周の長さで切り, まん中で直角にまじわるようにはり合わせた四方 位物差しを作り,まじわったところ(中心点)を 東京の上におく。その一方のテープは東京を通る 経線の方向に合わせる。これは東京からみた南北 方向をさす。もう一方のテープを地球儀上に当て ると,これは東京の東西方向を示す。こうして日 本の東や西の国々を調べる。
●物差しの中心点をワシントンやロンドンにおい て,これらの地点からみた日本の位置関係をとら える。
●メルカトルの世界地図に,東京からみた東西方 向を図示し,この地図上では,東や西の方位が誤 解されやすい点に気づく。
●メルカトルの地図で見ると,サンフランシスコ は東京の真東に当たるように思えるが,これは誤 りである。東京からみてサンフランシスコは北東 に当たり,サンフランシスコからみた東京の方位 は北西である。このような不都合は,二地点を通 る経線が平行していないことから起こるのである。
A点から見たB点の方位は,A点を通る経線と A・B間の最短径路(A・Bを通る大圏)とがA 点においてなす角のことである。北の方向が平行 していると思わせがちな円筒図法による世界地図 が方位概念を混乱させている。われわれは地図の 上に生活しているのではなく,地球の上に住まっ ているという事実を自覚しなければならない。
(3)二地点間の最短径路(大圏)を見つけたり, その距離を測る。
●四方位の物差しの中心点を東京の上におくと, 4本の紙テープの先端は地球儀の裏側の一点で合 わさる。この地点は南大西洋上の西経40度,南緯 35度付近で,東京の村蹠点である。この二地点の 距離は2万kmである。
二地点間の距離を求めるには,二地点を通る最 短径路(大圏)にそってその長さを測り,赤道上 の目盛りでそれは何度に当たるかをみて,その度 数に111km(4万km÷360度)を掛けるとよい。
●上の図のように地球儀に外接する円形の部 分を切りぬいた厚紙に目盛りをつけておき, これを求める2地点に当てると,目盛りで度数を読み取 ることができる。これに111kmを掛けると,2地点間の距離がわかる。
ただし,これは卓上地球儀でないと測定用の厚紙が使いにくい。最近は,地軸のない回転が自由な地球儀が市販されている。
5 おわりに
地図は本質的に地球儀の代用品である。地球儀を 小学校の段階から活用したり,日常生活の中に地球 儀を取り入れていくと,地図のひずみの理解は容易 になる。地球儀に親しませ,地球儀上での観察や計 測を繰り返して,その印象を確かなものにしておく ことが,球としての世界の認識を育てることになる。 話題に応じていつも地球儀が登場してくる,いわば 地球儀のある学校生活・日常生活を生み出していき たいものである。
【参考文献】
- 1.指導のための地図の理解 野村正七 中教出版
- 2.地図の研究 昭和54年1月号 帝国書院
- 3.現代地理教育講座(5) 古今書院