福島県教育センター所報ふくしま No.47(S55/1980.8) -007/034page

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の通気度を測定した結果は図2の通りである。

 人体は皮膚から水分を放散し,高温や運動時にお いては汗をかく。これらを外に放散させるために, 被服材料には適度の通気度が必要である。特にはだ 着などは,皮膚を清潔に保つために吸湿性,通気性 にすぐれたものがよい。

写真1 フラジール通気度試験機
写真1 フラジール通気度試験機

 冬には,体内の熱の放散を防ぎ,外からの冷たい空気の入るのを防ぐために,上着には通気度の小さいもの,織目のつまったもの,夏には,むし暑さと不快さを感じない通気度の大のものが望ましい。これらについて具体的な資料を用意して気づかせるようにしたい。

3.衣服地の保温性

 衣服地の保温性は,前にあげた衣服地の通気度 や含気率によって左右される。また衣服の型およ び着方などにも左右される。複雑な諸因子を総合 して成り立っている衣服の保温性を,着衣の実際 に適応するように測定することはむずかしいが, 身近にあるカタ温度計(写真2)を用い,冷却方 法で測定した結果は図3の通りである。

図3 衣服地の保温性
図3 衣服地の保温性

写真2 カタ温度計
写真2 カタ温度計

 図3で見られるように,羊毛製品は概して保温性 にすぐれている。中でも毛織物より,毛メリヤスの ように毛糸編物の方がさらに保温率が高い。したが って中着には,毛糸編物のチョッキなどを着ると保 温効果が大きいといえる。

(2)冬の衣服の色について考えよう。

 一般に冬の衣服は,心理的面から,暖色系の赤, だいだい,黄系統の色が多く見られる。制服では, 紺や黒が多い。これらの色が直射日光を受ける場 合の熱の吸収率は図4の通りである。

図4 衣服の色と熱を吸収する割合
図4 衣服の色と熱を吸収する割合

 図4で分かるよう に,白の熱吸収率を 100とした場合,赤 は約2倍,黒は2.5 倍の熱を吸収する。 直射日光を受ける場 合,上着は熱の吸収 率の高い色を用いた 方が保温効果は大で ある。児童に色は保 温と密接な関係にあ ることを気づかせる。 色については,理科の放射熱の学習と関連づけて指 導する。

4 おわりに

 従来第6学年で学習していた「気温や季節に応じ た着方」が新学習指導要領では,第5学年に移行さ れた。第5学年に応じた扱い方の工夫が必要である。

 今回は「衣服の着方」の指導に関連して,被服材料の保健衛生的な性能を中心にとりあげたが,指導の際,図表や衣服地の実物標本などと組み合わせて具体的にとり扱い,児童の心に印象深く残してやってほしいと思う。心に印象深く残れば,気温に応じて自分で考えて主体的な着方が実践できるようになると思われる。

【参考文献】


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