福島県教育センター所報ふくしま No.47(S55/1980.8) -008/034page
中学校教材
JouL熱の測定実験法の工夫
科学技術教育部 小荒井 要
1 はじめに
中学校理科におけるJoul熱の実験は,Q∝VI か, またはR=一定の場合に,Q∝I² を確かめる程度に 押さえる例が多い。
ここでは,ズバリQ=0.24VIt を,そう困難なく 検証する実験方法を追求してみる。
2 装置と測定の工夫
(1)熱量計は, 断熱性の高い ことがのぞまれるので 図1のように,容器はサーモ・カップ(断熱性が 高い)を用い,更に,サーモ・カップの周りを発 泡スチロールでとり囲んで,これをプラスチック容 器の中にはめ込んで装置をつくる。
(2)水温の正しい値を測定するには, 充分にかくはん を行って水温の部分的偏りを駆遂する必要があ る。このために,ミニスターラを用いる。
(3) 温度計は,0.5℃目盛り のものを用いる。
(4)サーモ・カップやミニスターラの回転子などの 熱容量を無視して計算をすすめたいので, 試料の水はできるだけ多く とる。(本実験では,カップ の容積が280cm³ だから,水は200g 程度)
(5)外部との間の熱の出入りを避けるために, 水温 の変化範囲は,室温付近を中心ことり ,その変化 範囲は,あまり拡げない。
次の図2のグラフは,気温19℃の室内で5.8℃の水 200g を14.3W の電力で24分間加熱した場 合の加熱時間と上昇温度との関係を示した ものである。
測定値は,ほば直線上にのってはいるが,室温に比較して低い範囲では測定値は直線の上側に散らばり,反対に高い範囲では,下側に散らばっている。
これは,室温に比較して試料の水温が低い場合は,系内に熱が入り込み,その反対の場合は,系外に向かって熱が放散していることを物語っている。
従って,実験を成功させるには,水温の変化範囲 △Tは,室温付近を中心にとり,その変化範囲は, あまり大きくひろげないことである。
(6)電熱線は,10オーム程度のものを用いて,供給 電力は10〜15W 程度に選ぶ。
(7)何といっても 電源装置が問題である 。理科実験用の市販の電源装置では,よい結果は得られない。
理科実験用の電源装置で得られる出力は,整流 された脈流(全波)であって,これを直流メータ ーで測定するとき,発熱に相当する実効値(電力) を求めることはできないのである。*1
直流メーターで,発熱量に相当する電力を測定す るには,強さ一定の直流(脈流ではなく)を出せる ような電源を用いなければならないのである。
そこで,容易に普及可能な,簡単で安上がりの安定化電源を製作してみた。次に,そのことについて