福島県教育センター所報ふくしま No.47(S55/1980.8) -015/034page
(研究報告)昭和54年度教育研究法講座
物の質的変化について推論する力を伸ばす指導
浅川町立浅川小学校教諭 近 藤 義 光
1 研究の趣旨
(1)研究の動機とねらい
子どもたちの理科学習のようすを見ると,実験観察には非常に興味をもち,喜んで器具を操作したり観察したり記録をとったりしているが,『なぜそうなるのか』とか『その結果からどんなことがわかるのか』『その実験のデーターからどんなことが考えられるのか』という考察・追求の場合になると,発言は少なく学習活動が遅滞することが多い。
特に実験の結果から考察する段階で,データー から結論を出したり,原理法則を導き出したりす る活動になると,ほとんどの子がすじ道立った考 えを述べたり,まとめたりすることが弱い傾向に ある。このことは,理科の学力テスト,自作テス トの結果にも表れている。そこで,指導法の改 善による学習活動の深化をねらいとして研究に取 り組むことにした。
≪表1≫知能と理科の学力
○教研式小学診断的学力検査L形式(S.54.6実施)
知能偏差値 学力偏差値 領域 生物とその環境 物質とエネルギー 地球と宇宙 53 47 正答率
57.7% 52.5% 53.6% ≪表2≫知識理解・能力に関する調査(たねのつくりと発芽)
○教師自作によるテスト(S.54.6実施)
領域 たねの発芽のきまりやしくみ 実験方法の吟味 実験条件の吟味 実験結果の考察 発芽しない原因の推論 適用発展 正答率 83.3% 63.3% 80.0% 30.0% 36.7% 66.7% (2)問題点
日常の理科授業の反省と実態調査から,次のような問題点があげられる。
- 日常の理科指導において,結果の考察や一般 化は教師中心になることが多かった。
- 児童たちは表面的な現象に気をとられて,何 のためにこの実験観察をしてきたのか忘れがちである。
- 教科書を見たり,リーダーに頼ろうとする傾向が強い。
- 思考を深める話し合いが低調である。
- 物事を考えさせる手がかりとなる資料や教具の工夫が足りなかった。
- 目に見えないものや直接観察できない事象に なると,実験の結果を論理的に整理したりまと めたりすることがなかなかできない。
(3)原因,対策
上記の問題点を追求すると,次のような原因が考えられる。
- 授業の流れの中で,常に問題意識を持たせる 配慮に欠けていた。
- データーの解釈,結果のまとめ,結論などを 児童自身に取り組ませる手だてが足りなかった。
- グループ活動における児童相互の意見の交換 や思考のねりあげ方の手だてが足りなかった。
- 事物・現象の事実や傾向,規則性などを児童 自身に言葉や絵,図などで表現させる指導が足 りなかった。
このようなことから,授業を改善するためには思考操作の手だてを考え,話し合い活動の活発化を図ることが大切であり,それが堆論する力を伸ばすことにつながるものと考え,本テーマをとりあげた。
2 仮 説
(1)仮鋭のための理論
1. モデル化をとり入れた指導
思考操作を容易にする手だてとして,種々の情報から図式化したり,記号化したりする「形式モデル」をとりあげる。自然の現象をモデル化することによって,子どもたちの科学的な見方・考え方が明確になり,学習の見直しや走者がより確かなものになると考えるからである。
2. 指導過程にそった話し合い活動の位置づけと 指導
実験観察を重視する理科学習においても,説明・伝達する能力が身についていなければ,望ましい科学的な見方,考え方が育っていかない。