福島県教育センター所報ふくしま No.47(S55/1980.8) -020/034page
《アイディア紹介》
社会科学習への興味関心を高めるために
郡山市立郡山第二中学校教諭 斎藤 勲
はじめに生き生きと学習に取りくむ生徒にしたい。そう考えるのは教師の願いであり,喜びでもある。
どのようにすればそうなるのか,今までにも多くの試みがなされてきた。その一つに私は生徒の学習に対する興味,関心をいかに高めるかということが重要ではないかと思い,各時間の導入段階を特に重視し,以下いくつかの実践をおこなった。
(1)具体的事物を資料としてとりあげ考えさせる
生徒の感覚にふれるものを資料として使うことは興味,関心をもたせる大きな要素である。それらには,実物(遺跡,土器,建物,など)や,写真,スライド,絵,テープなどがあり,手,目,耳等でふれたり,確かめたり,聞いたりすることで興味,関心をもたせることはできる。しかしそれだけでは学習への興味,関心を高めることはできない。その具体物として,疑問,意外性,驚きを感じさせるもの生活に密着したものを選びだす必要がある。
〔 例1 〕公害問題の指導
公害病に苦しむ人々の写実や,新聞等,その取り上げ方はいろいろある。私はその時周囲にある『水』を使用した,川や,家庭の排水,工場からの排水などをビーカーに集め,どこからとってきたものか色の違いやにおいなどで場所をつかませ,その汚染の様子や,経路や,影響についても考えさせ,調べる学習展開をした。それをもとに公害の種類や国内における公害病を学習させることで,他人ごとのような見方でなく,身近な問題として考えさせることができた。
〔 例2 〕東北の農作物
東北の農業を扱ったとき.りんご,なし,ぶどうなどの果物を並べて授業を始めた。『先生くれるの』『くいたいなあ』などもっぱら食べる方に興味をもっていたが,『学習が終わったら食べよう』ということで,産地,成育条件,人々の努力,など活気ある授業となったことがある。言葉や写真などと違ってそこに実物が存在していることによって生徒の反応は大変かわるものである。ブラジルの学習をするのにコーヒー豆をもってきて,学習を展開し,成功した話を聞いたことがあるが,それなどは生活に結びつけた事物の導入によって生徒達に興味をもたせた例だと思う。
(2)比較対照させ,考えさせる
興味,興心をもたせるには生徒達に疑問や反発を感じさせることも必要である。『どっちかな』『どうしてかな』などの迷い,かっとう『違う』という反発,これがわかりたい解決したいという欲求であり,学習への興味,関心を高める。そのために私は対比させる二つの資料を導入段階で使用することが多い。
文化の特色をとらえる。 地域の特色をとらえる。大きな変化をとらえる。潜在的共通点をとらえる。
このような場合に前後を対比することによって背景や原因をわかろうとするし,関連をとらえようとする。その場合注意すべき点は単純な対比,高い低い,多い少ないなどのように総論がすぐでてしまうものではいけない。多くの場合それがその授業の学習課題となるよう考慮すべきである。
(3)作成し,調べるよろこぴを与える。
提示される資料が,生徒達の作成したものであったり,調べたもの考えたものであることは学習への取り組みをより意欲的にする。お互いに発表しあい,話し合う生徒の活動は生き生きしている。参考書などで調べたりするよりは,アンケートをとったり,実際に歩いて資料を集めたりすることでその効果は倍加する。地理学習,公民学習などでは特に大切な方法である。
〔 例 〕農業問題をあつかったとき,生徒達が取材班 をつくって農家訪問をし,インタビューの様子を録 音してきた。農家のなやみ,問題点が生々しく聞く ことができた。生徒達の感想も,実際に働いている 人達と接し,話すことに迫力があっておもしろかっ た。活動的な生徒達は課題やねらいが明確であれば, 魚市場を見学したり,市役所や裁判所などにでかけ て資料を集めてくる。それが授業に生かされたとき 異常なまでに学習にとびついてくる。この場合大切 なことは計画がしっかりしていないとうまくいかな いし,調べさせる時間をとってやることがきめてと なる。生徒達が学習にとびつき,生き生きと学習さ せるために,教材をどうとりあげ,どうきりこむか 教師の創意工夫が要求される点だと思う。