福島県教育センター所報ふくしま No.47(S55/1980.8) -022/034page
意欲の三つを挙げているが,校内研修活動を外面 的にとらえようとせず,内面的に取り組もうとし ている姿勢がうかがえ興味深い。
図2は,三つの内的要因及びそれを支える条件 と問題点とを関連的におさえたものである。図を 参考にしながら,教師集団のモラールを高める校 内研修活動のすすめ方について,三つの観点から 考察していきたい。
3.モラールを高める校内研修活動
(1)リーダーシップ
リーダーシップを支える条件は,企画力,指導助言力,人間関係調整カの三つである。先に指摘された問題点の中では,研修計画,成果の活用は企画カに含まれ,指導・助言は,指導助言力と人間関係調整カである。
ここで留意することは,指導・助言に内包さ れている人間関係調整力であろう。いかに企画 カや指導助言カが優れていたとしても,人間関 係調整力が同時に発揮されなければ,価値の高 い研修活動は期待できないし,教師集団のモラ ールの向上は望めない。注5)三隅二不二氏はPM論 の中で,企画・指導力と人間関係調整カとの関 連によって,集団のモラールが決定されると述 べている。
『よい学校は,校内研修が盛んである。』と言 われるが,よい学校には,よきリーダーがいる。 集団の組織や実態に応じたリーダーシップの働 きかけにより,創造的な研修活動が展開される のである。注6)バーナードは,『組織において協働 こそが,本質的な創造活動であり,この協働の 誘発的な役割すなわち組織のモラールの創造を 演じるものは,リーダーシップである。』と述べ ている。このように,校内研修におけるリーダ ーの役割は大きいものがあり,学校における校 長,教頭,主任等の責任は重大である。リーダ ーが備えていなければならない資質を,自己自 身の研修によって磨きあげることが課題であろ う。また,注7)学校においては,指導・助言及び人 間関係の調整を,校長,教頭よりも主任層に望 む調査結果も報告されている。校内研修活動に おける教務主任,学年主任,研修主任等に対す る期待は大きいものがあると言わなければなら ない。
(2)コミュニケーション
コミュニケーションを支える条件は,発言しやすい組織,話し合う場の設定,会の効率的な運営,教育情報の活用の四つである。問題点の中で,共通理解,発言・討議は,発言しやすい組織と話し合う場の設定と関連があり,研修時間と主題設定・研修方法は,会の効率的な運営と教育情報の活用に関連する。
ここで特に留意したいことは,話し合う場の 設定である。『研究校の先生方は,休み時間で もよく打ち合わせをしている。』『校内研修の盛 んな学校は,グループでの集合が多い。』という 事実は,研修活動におけるコミュニケーション の重要性を説明している。フォーマルな集会だ けを研修の場と考えずに,そこに至るまでのイ ンフォーマルな話し合いの場を活用している様 子がうかがえる。注8)後藤敏夫氏はコミュニケー ションを「ある個人または集団が他の個人また は集団に対して,情報,感情,思想,意見など を伝達し,それを受けとられる全過程である。」 と述べている。研修活動についても,まず,話 し合う機会を多くすることに意を注ぐべきであ る。主題設定の共通理解,研究計画の立案,事 前協議,事後研究に至るまで,一連の研修過程 における自由な話し合いによる意思の交流がポ イントである。
次は,発言しやすい組織をいかに創造するか であろう。全体協議だけを重視せず,学年会, 教科部会,さらには係活動など多様な集団を組 織化することにより.研修活動が活発になって くる。また,話し言葉だけのコミュニケーショ ンにたよらず注9)KJ法やワークショップ等の活 用も効果的である。固定された方法や形式にこ だわらない創造的な研修活動を期待したい。
(3)協働意欲
協働意欲を支える条件は,一体感,個の特性,明確な役割分担,実動的な組織の四つである。問題点の中で,役割分担は,個の特性と明確な役割分担に関連し,研修意欲は,一体感と実動的な組織から生まれる協働意欲そのものである。協働意欲は,一つの組織化された集団が目標に向かって統制され,協力的に行動しようとする