福島県教育センター所報ふくしま No.48(S55/1980.10) -006/034page

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高等学校教材

教材としての三味線音楽

教科教育部   鎌  田  昭  治

 1.はじめに

 高等学校における「日本の音楽」は従来からも取 りあげられてきてはいたが,今度の高等学校新学習 指導要領の改訂で,より具体的に

(1)中学校第3学年で取り扱うこととしていた「義太夫節」を高等学校の鑑賞教材として取り扱うよう示したのをはじめとし, 
(2)郷土の民謡,郷土の音楽,さらには民族音楽をも鑑賞教材として取り扱うよう明記するなど,中学校との関連をはかり, 
(3)日本の伝統音楽を第1学年では琴曲,三味線音楽,尺八音楽を 
(4)第2学年では,能楽,義太夫節,琵琶楽を取り扱うこととし, 
(5)第3学年においては,生徒の特性,地域の実態に応じた取扱いをするよう示された。

 我々は,ともすると,日本の音楽は教材化しにく い,どう展開させてよいかわからない,コトバが理 解しにくいのではないか―という危惧(きぐ)の念が先に立 って,躊躇(ちゅうちょ)していたように思えるのである。

 しかし,中学校では,すでに「小鍛治」「観進帳」「三十三間堂棟由来」等,共通教材としてとりあげられ鑑賞されているとき,中学校の延長線上としての高等学校でも,日本の音楽を積極的に取りあげることが急務であろう。

 以上の鑑賞教材の配列でもわかるように,日本の伝統音楽の中で,三味線音楽の占める割合は大きい。そこで三味線音楽の「唄いもの」と「語りもの」について,楽曲分析と指導案を以下に示してみることにした。

 2.三味線音楽〜唄いもの〜について

 音楽Iにおいては,中学校の鑑賞教材の延長とし て,主に「唄いもの」を取り扱うこととし,ここで はそのうちの「長唄」に焦点をあてることにした。

(1)長唄の歴史について

 長唄は検校・勾当らによって歌われた上方長唄 と区別し江戸長唄とよばれ,歌舞伎のための音楽 として生まれた。元禄の頃(1680〜1704)京都か ら杵屋勘五郎が歌舞伎役者と共に江戸へ釆て,芝 居の伴奏に歌ったのがはじまり(諸説がある)と いわれている。以後,享保の頃に動作に合わせて 伸縮の自在な唄い方の「メリヤス」がおこり,急 速に発展し,長編の歌曲を生み,踊りの伴奏に用 いられるようになった。「娘道成寺」「観進帳」「小 鍛冶」などは歌舞伎にともなうものである。又, 江戸時代後期には芝居を離れて独立した「お座敷 長唄」がおこり,「秋の色種」「吾妻八景」など 名曲が生まれた。

(2)伴奏音楽について

 長唄では,伴奏の三味線の活躍が著しく,かなり長い器楽的な部分を「合の手」として用い,それに替手あるいは上調子を添えて複音で奏することが多い。

 長唄には,囃子(はやし)を伴うものと,用いないものと があり,歌舞伎では笛(能管)小鼓,大鼓,太鼓 を用い,場合によっては柔らかい音色の篠笛を用 いたり,種々の楽器を陰で用いたりする。

(3)長唄の特徴

 -1.長唄は,概して華麗多彩である。

 -2.舞踊の伴奏が大部分なので,単なる歌詞の音楽化でなく,舞踊的性格が著しい。

 -3.発声は,比較的開放的で,胸声が多く裏声はあまり使わず,喜怒哀楽の声の極端な使いわけもない,明瞭,淡白,平明な声である。  

 -4.三味線は細ざおで,糸は細く,こまは小さく,ばちは軽いもので,ばちさばきのみごとさに特色がある。

(4)長唄「吾妻八景」の楽曲分析

 −1.選曲の理由

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