福島県教育センター所報ふくしま No.48(S55/1980.10) -012/034page

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― 生徒指導(その7) ― 

生徒指導と学習指導

        経 営 研 究 部     
原      洋
斎 藤 洸 旦

〔問 26〕 「学習指導」に対し,「学業指導」 ということばがありますが・・・・・・。

〔答 え〕  従来,学習指導の中で,特に,生徒 指導に関係する部分を「学業指導」とよんできた傾 向があります。例えば,生徒の教科・科目の選択に 関する指導,学習不適応に対する指導,ホーム・ル ームにおける人間関係の調整,進路相談などの部分 です。そして,この部分の担当は,主としてホーム ・ルーム担任が当たり,これに対し,各教科の教師 は,それ以外の「学習指導」つまり,教材について の理解を深めたり,技能を高めたりする指導に当た る,という考え方です。実際の教育では,そんなに はっきり区別されないとしても,意識の上ではそう 考えてきた教師が,とくに,高等学校においては多 かったのではないでしょうか。しかし,今日,「学習 指導」と「学業指導」とを区別することは,はたし て妥当と言えるでしょうか。

 高校入学者が94%を越え,生徒の能力,適性,進 路志望などが多様化してきている現状に応じきれず, 多数の学業不適応生徒を生じ,それが,ドロップ・ アウトや非行につながっている事実にかんがみると き,生徒指導的発想からはなれた学習指導などは, 成立の余地がないのではないか,つまり教科担当の 教師による一時間一時間の授業そのものに,生徒指 導的発想が要求され,学校経営そのものが,学習指 導型から生徒指導型に切りかわるべきことが痛切に 求められていると言うべきでしょう。

〔問 27〕 高等学校における,いわゆる「落ち こぼれ」の実態について知りたいのですが。

〔答 え〕  いわゆる「落ちこぼれ」を「授業に ついていけない生徒」とみ,中学校における全教科 の成績を,5段階相対評価に修正して,2.0未満の 生徒を学力遅滞者とみなせば,その3割は高校に進 学していません。つまり,すでに中学校における学 力遅滞者の7割が現在高校に進学していることにな ります。この数値は10年前に比べ倍増し,高校を義 務化すれば,更に1.5倍増えるとする,岡山・兵庫 2県における推計があります。また,中学校の教師 の意識調査では中学3年の英語,数学で,18%から 19%の生徒が授業についていけないとみています。

 また,「落ちこぼれ」を学校からの脱落者,いわゆ るドロップ・アウトとみ,その中に,退学,留年, 親の転勤以外の転校者を含めた東京都の公私立高校 における調査では,1%〜3%のドロップアウトを 出した高校は71.7%にものぼっています。平均1.5 %の生徒が脱落しています。その原因は,学習不適 応が27.6%,本人の性格行動が31.6%になっていま すが,性格や非行も学習不適応と交錯していますか ら,半数以上が学習不適応からの脱落者とみてまち がいないでしょう。 **

 福島県では,昭和54年度の全日制高校の退学者数 は,872名で,前年度にくらベ89名増えています。 全生徒数の1.18%に当たります。退学の理由は,学 業不振,疾病,経済的理由,素行不良,その他(意 欲喪失,家事都合,怠学,登校拒否など)となって いますが,学業不振と素行不良で,60%以上をしめ ています。

 学習についていけない生徒をどうするかは,緊急の課題といえるでしょう。


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