福島県教育センター所報ふくしま No.48(S55/1980.10) -016/034page
<研究報告> 昭和54年度教育研究法講座
器械運動に診断・治療をとり入れた指導
― とび箱運動「腕立て前方回転」 ―
二本松市立二本松第一中学校 前 田 長
1 研究の趣旨
(1)研究の動機とねらい
従来から,生徒たちの運動領域についての興味・関心の傾向は,器械運動等の個人的スポーツよりも球技系の集団的スポーツに片よっているといわれている。
<表1> からもわかるように,本校1年男子でも 同じ傾向にある。
<表2> からは,嫌いな器械運動にあって,とび 箱運動を好んでいる生徒が70%近くいることがわか る。
<表3> からは,切りかえし系のわざよりも,技能・情意面から高度さを要求される転回系のわざが できない傾向にあることがわかる。
「できる」「できない」がはっきりあらわれる器 械運動において,学習カードを有効に活用し,指導 過程にひとりひとりのつまずきの解明とそれに応じ た手だてを位置づけ,学習を進めることにより,技 能が向上するとの考えから主題を設定し,この研究 にとり組んだ。
<表1>運動領域の興味・関心調査1年男子 (78名)
好き・嫌い
好き 嫌い 領域 陸上競技 3名 4% 19名 24% 水 泳 17 22 13 17 球 技 51 65 2 3 器械運動 1 1 33 42 格 技 6 8 11 14 <表2>器械運動の内容についての興味・関心調査
好き
好き 嫌い 内容 マット運動 15名 19% 32名 41% 鉄棒運動 9 12 31 40 とび箱運動 54 69 15 19 <表3> とび箱運動の到達度
到達度
できる できない 到達度 題材 腕立て開脚とび 75名 3名 96% 腕立て閉脚とび 71 7 91 台上前転 73 5 94 腕立て前方転回 22 56 28 (2)問題点
とび箱運動の問題点として,次の点があげられる。
-1.生徒側
- ア.体力の個人差と情意面の障害により,転回系のわざを積極的にやりたがらない。
- イ.到達目標や学習方法の理解不足から学習意欲が低い。
-2.教師側
- ア.画一的な一斉指導が多く,個別指導の機会が少ない。
- イ.技能,認知,情意面のつまずきの診断がよくなされず,それに応じた手だて,つまり治療が十分行われていない。
- ウ.用具や視聴覚教材教具を十分活用していない。
(3)仮説のための理論
-1.保健体育科における「つまずき」とは,技能,認知,情意の三つの面から考えなければならないが,とび箱運動では「技能」「情意」 のいずれか,または二つの面が原因でできない生徒を「つまずき」とする。
-2.診断とは,ひとりひとりの生徒について,つまずきの原因を明らかにすることである。
-3.治療とは,診断の結果にもとづいて,ひとりひとりの生徒への適切な処法を考え,再または再々指導を加えていくことである。
2 仮 説
「腕立て前方転回」の学習において,学習カードをもとに診断・治療を実施し,つまずきを解決していけば,ひとりひとりの技能は高まるであろう。
3 研究計画
(1)研究方法 一群法
(2)研究対象 第1学年1,2組 男子38名