福島県教育センター所報ふくしま No.48(S55/1980.10) -020/034page
(表7) グループ内生徒の事前・事後の変容 (最初のグループ編成員による)
*表7の見方 わざの構成要素に従い,事前・事後テストのでき具合を最初のグループ編成員に より数字に表したものである。上段が実人数,下段が%を示している。
A
グループ
(下位グループ)
15人事前 4人 2人 3人 0人 11人 0人 0人 0人 0人 0人 27% 13% 20% 0% 73% 0% 0% 0% 0% 0% 事後 9 4 4 0 15 0 1 0 0 7 60 27 27 0 100 0 7 0 0 47 B
グループ
6人事前 5 5 3 1 5 0 0 1 0 2 83 83 50 17 83 0 0 17 0 33 事後 5 6 5 3 5 2 0 0 0 6 83 100 83 50 83 33 0 0 0 100 C
グループ
13人事前 13 13 12 12 13 8 0 7 3 12 100 100 92 92 100 62 0 54 23 92 事後 13 13 13 12 13 10 4 10 6 13 100 100 100 92 100 77 31 77 46 100 Dグループ
(上位グループ)
4人事前 4 4 4 4 4 4 1 4 1 4 100 100 100 100 100 100 25 100 25 100 事後 4 4 4 4 4 4 3 4 4 4 100 100 100 100 100 100 75 100 100 100 わざの構成要素 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
- 着地で立てなかった生徒 20名 → 立てるようになった生徒 12名
- 初めの頃はこわかった。 19名 → 今はこわくなくなった。 14名
- 初めの頃は嫌いだった。 17名 → 今は好きになった。 13名
等のように技能,情意面で変容がみられた。
-2.安全面に十分留意し,用具の効果的な活用を はかった結果,4(3)-2.のように意欲的におもいきり よく学習する生徒が多くみられるようになった。
-3.能力別編成にし,学習を展開したが,つまず きの類型により治療場面を設定できたので効率的で あった。
-4.学習カードを中心に自己評価を行い,常に到 達程度,技能のポイント,再・再々学習法等をおさ えて,主体的にとり組む学習態度が形成された。
-5.補助活動,相互観察等を通して協力的学習が 身につき,他の題材への転移が可能になった。
以上の点から,仮説は,技能の下位,中位層の生徒にとっては効果的であったと判断してよい。
5 反省と問題点
生徒の授業後の感想文を一部紹介してみたい。
- A君・・・・能力に応じて学習のし方が異なり,自分に合った方法で学習できたので技能が向上し,またグループの人たちと楽しくできた。
- B君・・・・学習カードを参考に,自分の目標達成を目指しておたがいに励まし合い意欲的にとり組んだ。
- C君・・・・初めの頃はこわかったが,技能の程度に応じてとび箱の高さを変え,またセフティーマットを効果的に活用したので安心して学習できた。
以上のように,1年生にとっては,難度の高い学 習内容であったが,大部分の生徒は,情意面の重圧 を克服して目標に到達でき,今後,鉄棒,マット運 動等にとり組む際,自信をもってできると確信して いる。反面,まだ着地で立てない生徒8名,今でも こわいと答えた生徒5名,今でも嫌いだと答えた生 徒4名おり,技能,情意面でひとりひとりに定着し ていない点を反省してみる必要がある。
今後の課題としては,
- 学習カードおよび到達程度の内容の再検討
- 診断面におけるVTRの積極的な導入と活用
- 生徒の実態把握による治療面を重視した指導過程の組立て
- 上位層の生徒に対する治療指導の工夫
- 治療面を重視した段階的指導法の工夫
等があげられる。
ひとりひとりに学習を成立させ,技能の向上,定着をはかり,意欲的にとり組ませることは授業を展開していく上で,最も基本となることである。この研究を出発点として,生徒サイドにたち,生徒に内在する能力を引き出し,十分伸ばしてやる指導を今後根気強く継続していきたい。
さらに,この研究を通して得たいくつかの貴重な成果を他の題材の指導に転移できるよう実践研究を進めていきたい。
6 参考文献
- 器械運動指導ハンドブック 大修館書店
- 教育研究のすすめ方 県教育センター
- 所報ふくしま(No.29) 同 上
- 中学校保体科指導書 文部省
- 教育評価の考え方 図書文化
- 到達度評価の展開と授業改革 明治図書