福島県教育センター所報ふくしま No.48(S55/1980.10) -024/034page
性を試すため,研究協力校の自主的な実施計画による試行と,試行に基づく資料の収集を行った。
この間に,評価の基準性と評価結果の受けとめ方が問題視された。これは,同評価が学校経営の現状をは握し,経営改善に役立てようとするいわゆる経営評価の本質の理解にかかわるものであるだけに経営評価意識の変革が同時に期待されることを示している。以下で,評価用具(学校経営評価票)の構成および研究協力校における試行の概況等について簡単に報告する。
(1)学校経営評価票
学校経営評価は,経営の全領域にわたって年間における経営のすがたをありのままには握することが必要とされることから,日常が評価の連続と考えるのが至当ではあるが,教育の過程での区切 りの時期における評価として,年度末評価ととも に学期末評価もあわせて試案に含めることとした。
-1.学期末評価票は自由記述方式をとり,評価,領域ごとに反省・評価・問題点・改善策等を記入するようにして,学校経営評価領域における教職員の包括的な意見等を収集するようにしている。
-2.年度末評価では,評価領域は-1.と同じであるが,領域のおのおのが計画段階(Plan),実施段階(Do),反省・評価段階(See)に区分され,各P・D・Sにそれぞれ2個の評価観点が付されている。
評価観点の設定にあたっては,評価しようとする領域を構成している要素的素材を厳選し,それ等によって代表される恒常的経営活動のすがたが端的に推し測られるように設置することをねらいとしている。
評定結果の処理・集約の方式等についても同時並行して作業をすすめたが,それを含めた詳細については,当プロジェクトの成果報告の機会にまつこととしたい。
(2)評価試案の試行
研究協力校による評価試案の試行は,試案自体の現場への適合性を見るものとして行ったが,実施後の反応は次のように要約される。(順不同)
- 常日頃の経営に対する教職員の生の考え方がわかる。
- 学校の状態を系統的・全体的には握できる。
- 手の届かなかったこと,気付いても手が出せなかったことの評価をする機会になる。
- 組織の機能を最高度に発揮させるのに,部分的な停滞や逆行を修正する視点を与える。
- 個人の主観に頼りがちな反省を,客観的な評価に導く転機である。
- 全職員が学校経営をとらえる眼をもっための機会である。
- 特定の観点からの自己のきびしい評定ができる。
- 実施によって,校内のモラールの向上に波及するものと考える。
このほか,さまざまの角度から意見や考え方が集 約された。その結果に基づき当プロジェクトは,評 価の実際面をさらに充実し,実践に近づけるため以 下の各項目にわたって検討し,それぞれの必要性に 応じた修正を加えることにしている。
- (1)経営評価のための組織,実施要領
- (2)経営評価票の様式
- (3)経営評価の観点と尺度
- (4)経営評価結果の集計・活用
- (5)経営評価試案の自校化
評価試案の全体にわたって以上の検討をすすめると同時に,特に質的な考慮点として次のことをおさえ,同試案が現代における学校経営の評価にふさわしい役を果たすことができるように,量・質にわたる整備をすすめている。
- (1)学校経営の動態的なは握
- (2)学校経営の動態的側面を評価する視点作り
- (3)学校経営評価観点の基準性・その表現法
以上,研究の経過を中心とした当プロジェクトの状況を述べてきた。
学校経営評価は,経営の現状を確実にとらえてよい面を維持し,改善を要するものについては,次期の計画・実践の過程でじゅうぶんな実現を図ろうとする学校経営の円環的なはたらきの重要な側面である。
当プロジェクトは,この認識にたって今後の研究をすすめ,学校経営改善のための役割の一部に参加する意思をかためているところである。