福島県教育センター所報ふくしま No.49(S55/1980.12) -008/034page

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資料13
資料13

(5) 結果の考察

資料6のソート技法の実験から資料7の結果を得た。普段汎用コンピュータでは処理速度が高速のため特に技法の能率を考慮しないが,マイクロコンピュータは高い機能があると同時に、ハード的な能力の限界があることからプログラム能率への配慮が必要な場合,技法は重要なファクターとなる。

資料8,9では資料7からサンプリングし実験式(2次回帰式)を作成した。実験の整理には回帰グラフを作成して推定し考察の資料とした。

ソート技法の吟味

資料10〜13の回帰グラフから各技法の特徴は,

[1] 逐次決定コア・ソートのソートタイムと能率

(ア) ソート交換項目数の影響は少ない
(イ) 隣接交換法に比べ,3項目以上で能率が良い
(ウ) 最初から規則的数列でもほぼ同じ処理を要す

[2] 隣接交換コア・ソートのソートタイムと能率

(ア) データ数はソートタイムを2次関数的に増加
(イ) 交換項目が3科目以上では,能率が非常に悪い
(ウ) 技法の工夫で能率の改善が可能(アドレスソートを併用)

[3] 2分コア・ソートのソートタイムと能率

(ア) データ数が増加するほど,対能率が向上する。

◆データ数200,交換項目5科目のとき○2分法(2分24秒),○逐次決定法(12分31秒),隣接交換法(17分44秒)
※現在一番早いソートアルゴリズムはquick sortといわれる。

実験式(2次回帰式)と回帰グラフの吟味

変量xを原因,yを結果として,xとyの相関を y=f(x)の関数関係で表すことを回帰分析という。

今回は最小2乗法の手法で2次回帰式を導いた。
aΣx 4 +bΣx 2 +cΣx 2 =Σx 2 y
aΣx 3 +bΣx 2 +cΣx=Σxy
aΣx 2 +bΣx+cΣ1=Σy

この多元連立方程式の解法には,最も良く利用されているガウスジョルダンの消去法を使用した。回帰式はサンプリングの数と数値の範囲により多小の誤差は出るが,かなり近い推定を算出する。またこの回帰式の有意性は本来検定を行う必要があるが,ここでは省略する。

おわりに、この成績処理の題材をとおして,単にデータ処理だけでなく技法の研究とOR(統計等)技法等の総合的演習を行ったが,マイクロコンピュータでも充分目的を達成できた。この強力な情報教育のToolを活用されることを期待する。

○アメりカにおける使用言語の傾向
言語
ユーザ数
利用%
BASIC l04 75
FORTRAN 96 69
COBOL 19 14
PL/1 15 11
Assembly 12 9
APL 7 5
ALGOL 3 2
(アメリカの商用TSSの実情)

○マイクロコンピュータの機種の例
機種名 メーカー名
備考
べーシックマスター 2 II 日立 15万
NEW LKlT−8 富士通 10万
MZ−80K2/C シャープ 20万
PC−8001 日本電気 17万
APPLEII アップル 1000ドル
CEM3016/32 コモドール 25万
TRS80II ダンデイ 20万
(日本で販売されている機種例)

3. 今後の情報教育

新学習指導要領の情報教育推進にかかわる2点の,第1は、今まで職業教育でも特定の学科での選択履修であったが,今回「工業」では「工業基礎・工業数理」を全学科必修の共通科目として新設し、その中に全学科での情報処理教育を掲げている。

第2は,普通科に職業教育を重視する方向を明示した。しかも,履修に適当な科目として工業では「情報技術I」(第10節第3款13)を例示している。

1969年文部省に「情報処理教育に関する会議」を設置して一連の答申がなされ,情報技術科が各県に新設され情報教育推進の中核として成果をあげつつある。しかし一般的な情報教育は,設備の面からほとんど進展していない状況にある。ここに,一般的な情報教育を推進しているユニークな具体例を紹介する。筑波大学では新1年に共通科目「情報処理(2単位)」を設け履修を義務づけている。このことは一般学科での情報教育の必然性への先見の明であろう。

今,産業界ではマイクロコンピュータの出現により第2の産業革命といわれるほどすべての産業機械の中に取り入れられ利用されているが,これに現在,漢字・音声・文字入出力が実現しつつあり,マイクロコンピュータと一体化して発揮される情報化のインパクトパワーは,今までにない速さで情報化を進展させると予想している。情報教育の目標は,

第1に 情報化社会(情報過多)で,求める情報を選択できる能力を育成すること
第2に ある目標を定め種々のデータとファクターを基に求める情報を創造する能力を育成する

このことは,エキスパートのみに望まれるのではなく,今後の多様な社会へ巣立つ生徒一人一人に不可欠の条件となりつつある。


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