福島県教育センター所報ふくしま No.49(S55/1980.12) -009/034page
―生徒指導(その8)―
退学と停学
経営研究部 原 洋
斎藤 洸旦
〔聞い30〕 退学の法的根拠について知りたいのですが。
〔答え〕 退学は停学とともに,懲戒権(学校教育法11条)にもとづき、校長が行う処分ですが,就学義務との関係で、公立の義務教育諸学校ではゆるされません。
懲戒はすべて,「教育上必要とみとめて」行う「教育的」処置でなければならず,特に,生徒の身分の得喪にかかわる退学については慎重でなければなりません。
退学処分の理由については,法律で限定しています。学校教育法施行規則13条3項に,
「 一 性行不良で改善の見込みがないと認められる者 二 学力劣等で成業の見込みがないと認められる者 三 正当の理由がなくて出席常でない者 四 学校の秩序を乱し,その他学生又は生徒としての本分に反した者」
と,掲げる場合に限ります。つまり,退学処分は法規裁量行為で自由裁量の余地はありません。したがって,校内規程(内規)に,法定以外の理由で,退学を規定することはゆるされません。「日付なしの退学願」または,今後再び懲戒をうけるような行為があった場合は,無条件に,いわゆる自主退学する旨の「誓約書」を校長と生徒間にとりかわすことは,反省を促す措置としてとられることがありますが,指導措置としてはもちろん,法的にも問題があります。退学の手続について判例は,(1)憲法にいう「適正手続」は要しない,(2)生徒の弁明をきかなかったから違法とすることはできない,(3)一つの行為につき停学と退学を課することは,二重処分禁止の原則に反するとは言えない,としています。処分の告知については生徒,保護者の出頭がない場合,ア.生徒の学年氏名 イ.懲戒の種類ウ.法的根拠 エ.処分年月日 オ.処分事由の説明などを明記して内容証明郵便で送付する必要があるでしよう。
〔問い31〕 停学の法的解釈について問題となる点は……… 。
〔答え〕 停学については,公立のみならず、国立,私立についても、義務教育諸学校ではゆるされません。
「謹慎」「出校停止」という名称をつかっても,それが懲戒権の行使であれば,停学と同じ懲戒処分と解されます。
停学または謹慎は、教育課程の履修を一時停止させる処分です。したがって,いわゆる謹慎期間中に,生活指導や教科指導を行うから教育的「指導」であり「処分」ではない,または,「事実上の懲戒」であるとするのは法的には問題があります。
「無期停学」について判例は,「事情に応じてその解除が行える趣旨からのぞましく,違法とは言えない」としています。これは,少年法の「不定期刑」と同じく,生徒の教育的可能性を重んずる処置として是認されているわけです。したがって,無期停学をいわゆる有期停学よりも重い処分とするのは問題です。刑法でいう「累犯加重」という考え方も,学校で行う懲戒処分にはなじまないでしょう。
要するに処分の公平さも大事ですが,その前に,教育的措置として適正であるかどうかがまず問題とされねばならないでしょう。
〔問い32〕 懲戒はすべて教育的処置でなければならない,ということはどういうことですか。
〔答え〕 文部省の「生徒指導資料第2集」によれば,特に停学や退学については,生徒の修学の