福島県教育センター所報ふくしま No.49(S55/1980.12) -011/034page

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〈教育相談〉

シンナー等乱用生徒の背景とその指導及び対策

教育相談部  渡辺 憲一

1.はじめに

図1は,シンナー等乱用少年の過去5年間の補導状況である。この図から福島県の補導人数を全国と比較し,その推移を見てみると、かなりの勢いで増加していることがわかる。特に,中高校生の54年の補導人数は、中高とも50年の約3倍になっている。さらに,全体に対する高校生の占める割合を,過去5年間の平均をとり,比較してみると,全国の21.7%に対し27.0%とかなり大きく,このことから,本県では,特に高校生への汚染が進んでいるものと考えられる。

当センターにも昨年にはなかった高校生のシンナー等乱用の相談が7件もあり,憂慮される事態ではなかろうかと考える。こういった状況にかんがみ,シンナー等乱用による一般的徴候と,今年来所した相談事例を基に,シンナー等乱用生徒の背景と指導及び今後の対策について,述べてみたい。

図1 シンナー等乱用少年補導状況
図1 シンナー等乱用少年補導状況

図2 中高校生の全体に対して占める割合
       5年間の平均(S50〜S54)
図2 中高校生の全体に対して占める割合

2. シンナー等乱用少年の類型

シンナー等乱用少年の動機・場所・吸引方法及び身体的症状等をみると,友だちに誘われてというのが多く,共かせぎで留守がちな家とか,離れ部屋を持った友だちの家に集まり,3〜4人でビニル袋やジュースかん等に入れて吸引する方法がとられている。初めての吸引では,はき気を感ずる者が多く,回を重ねると次第に不快感が消えていく。

シンナー等の乱用の進み程度を、吸引回数・頻度動機及び関連非行等から,表1のような三段階に類型化を図ることができ,それぞれ指導や治療の方法も異なるのである。また,状況いかんによっては,単純模倣型→非行促進型→嗜(し)癖型に進行することが多い。

表1 シンナー等乱用少年の類型
特徴 指導
単純模倣型(初期)
○吸引期間… 1ヵ月以上1年以内
○吸引頻度… 月1〜2回
○動  機… 好奇心,友人との交際手段
(一過性の場合が多い)
集団でやる場合が多い。
○性  格… 特徴なし
○家庭環境… 特徴なし
有害性を理解させる。
映画・スライド
初回乱用時の不快感をサポート
興味を他のものに転換
・余暇の利用
・趣味の再発見
交友関係の調整
監視のチェックの強化
非行促進型(中期)
○吸引期間… 1年以上〜1年半
○吸引頻度… 週1〜2回
○動  機… 仲間との同一化・模倣
欲求不満,暇つぶし
(以前より何らかの非行あり)
5〜6人でやる場合が多い。
○性  格… 反社会的未成熟
自信,意欲及び忍耐力の欠如
怠惰・付和雷同
夜遊び,社会より脱落
○家庭環境… 放任・焦関心・過保護
○その他… 不良交友(怠学・喫煙等)
不純異性交遊
自已の認識の甘さ・性格の弱さのの自覚
映画・スライド
肉体が侵されるという直接有害性を強調するほうが効果的。
交友関係の調整
嗜癖型(常習)
○吸引期間… 1年半以上
○吸引頻度… 隔日,毎日(習慣的)
○動  機… 幻想の世界を求めて仮の安定を得ようとする乱用
(心理的依存が見られる)
単独で吸引するのが多い。
○性  格… 神経症的
吸引時の快感が忘れられず,自分でやめようと思っても,意志が弱いの で叱られてもやってしまい,癖になりやすい。
○家庭環境… 幼少期から思春期にかけ両親の不和,離別,父の頑固.支配的,母の口やかましく干渉的,過保護
○生活態度の改善―精神的自立
○カウンセリング
○催眠療法―
○矯正教育― 少年院
救護院
○隔離療法― 精神病院入院
参考文献  ・日本の少年非行 大成出版
        ・月刊生徒指導(80.5増) 学事出版
        ・青い非行 学陽書房

3. 相談事例(背景とその指導)

表2は、当センターに来所した高校生2名の事例を簡単にまとめたものである。


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