福島県教育センター所報ふくしま No.49(S55/1980.12) -024/034page
級数による学校規模と学校の所在する地域(特A地区,A地区,B地区,C地区)によって,県下の学校を11個の層に分け,各層にその層に属する児童数に比例した標本数を割り当て,1学級の児童数を40名とみて,標本校1校は標本1学級40名として,その層に割り当てられた標本数に見合った標本校を抽出して決定した。なお,1学級40名を割る層の場合は標本数を多くとるなど配慮した。
(3) 本検査の標準得点について
本検査において,個人の教科得点(正答数合計)の標準得点としては,T得点を用いた。T得点というのは,得点分布がどんなものであろうとも平均値が50、標準偏差が10の正規分布を基準として決めておき,これにその得点の分布の同じ割合を対応させることによって得られたものである。
普通,標準得点としては,いわゆる偏差値が用いられるのであるが,本検査において,この偏差値を採用しなかった理由は次のとおりである。
偏差値が意味をもつのは,得点の分布が正規分布をするときで,このときのみ,偏差値は集団の中での相対的な自分の位置を表1,表2のように明示する。
表1 得点の分布が正規分布をするときの偏差値区分
偏差値 20 25 30 35 40 45 50 55 60 65 70 75 80 上からの% 99.9 99.4 98 93 84 69 50 31 16 7 2 0.6 0.14
表2 得点の分布が正規分布をするときの偏差値区分
偏差値 〜34 35〜44 45〜54 55〜64 65〜 5段階% 1(7) 2(24) 3(38) 4(24) 5(7) ところで,普通,検査の成績はなかなか正規分布するものではない。得点の分布が正規分布しないときは,偏差値は集団の中での自分の相対的な位置を明示しないから,他教科間のそれぞれの偏差値を比較しても,どちらがその集団の中で良いのか、悪いのかは比較できない。そこで,得点の分布が正規分布をしない場合でも,得点を変換した値が,集団の中の相対的な位置を明示するものはないかという要求のもとに考えられた標準得点が,T得点なのである。本検査では,教科別個人得点(正答数合計)とT得点との換算表を示した。
(4) 本検査の正答率とその信頼区間について
本検査は,福島県の当該学年児童を母集団とする標準学力検査であるが,すでに(2)で述べたように,層化無作為2段抽出法によって抽出した標本を基にして標準化したものである。標本は母集団の一部であるから,標本の正答率が,そのまま母集団のそれと完全に一致するわけではなく,誤差が伴う。そこで,本検査では,これらの誤差の範囲を正答率と合せて明記し指導に役立つように配慮した。
なお,本検査では個々の児童の指導に役立つように,問題用紙の裏表紙に「学力診断プロフィール」を掲載した。そこでは,個人の領域ごと正答数,正答数合計を求めただけで簡単に記入できるよう配慮した。
(5) 本検査の信頼性と妥当性
検査の信頼性とは,その検査による結果の安定性をいい,その安定の程度を信頼度という。
信頼度は,普通信頼度係数で表す。信頼度係数を決める方法としては,再検査法,代替法,折半法などがあり,これらはいずれもある相関係数をもって信頼度係数とするわけであるが,あまり実際的なものとはいえない。また、信頼度係数をキューダー・リチャードソンの式を用いて算出する方法もあるが,これは検査小問の均一性の度合いを示すだけのもので適当ではない。
そこで本検査では,当該教科の小問について,A地区の児童の正答率とB地区の児童の正答率との相関係数を算出し,信頼係数とした。これは地域の違いによる各小問正答率の相関係数の大小がそのまま検査結果の安定性の強弱を示すものと考えたからである。
この信頼度係数は相関係数であるから,その値が1に近いほど信頼度が高い。本検査の信頼度係数は,各教科,各学年ともいずれも1に近く,信頼度は非常に高いとみなしてよい。また,検査の妥当性とは,その検査が測定対象としているものを測定するのに適したものであるかどうかという測定対象に対する検査問題の適正さをいうが,本検査は,すでに述べたように,十分妥当性があると考えられる。