福島県教育センター所報ふくしま No.50(S56/1981.2) -003/042page

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教育センターの回顧と展望

元福島県教育センター所長  白岩 和夫

元福島県教育センター所長 白岩 和夫

教育センターの開所は昭和46年4月1日であった。1970年(昭和45年)はユネスコのいわゆる「世界教育年」であり,「教育爆発」という強い響きを持ったことばにも象徴されていたように,当時,世界的に教育の推進,充実ということが先進国たると後進国たるとを問わずなされていた。わが国においては,特に教育研究,研修の充実強化ということが時代の要請として全国的に叫ばれていた。「理科教育センター」の設置は本県においては昭和40年であったが,こうした要請にこたえる先駆であったと言えるであろう。このようにして,教育研究,研修の中核としての「教育センター」という構想が生まれて来たわけである。

しかし,当時は,まだ全国的にも教育センターとして整備されたところはなく,わずかに北海道,岩手,埼玉,神奈川,愛媛,高知等において,やや形をなして来つつあるというのが実情であった。

それらを参考とし基本的な構想を樹立して検討を重ねた結果,最初の技術,資材を取り入れ,昭和44,45年の2か年を費して,総建築面積8,931平米・総工費7億1,500余万円(既設理科教育センター分を含む)という全国屈指の規模と内容を整備した「福島県教育センター」が完成した。特に配慮されたことは,
全員宿泊による研修が可能なものとする。
教育研究所の系譜を継いで教育研究を重視する。
教育相談を実施し,研究と実践を結びつけるとともに社会の要請に応ずる。
教育資料のセンターとしての機能を充実する等の諸点であった。

教育研修は県下全教職員が平均5年に1回研修の機会を持つという計画の下に,初年度は宿泊棟の完成を待って8月から実施し,講座数43,全参加者1,984名であった。広域という本県の実情からの問題が多く苦心苦労もあったが,概ね順調に実施できたのは,各方面の絶大なご支援によるものであり,この稿をお借りして,改めて感謝の意を表する次第である。

教育研究は,その重要性を再認識し,実験学校を委嘱して,実践を通して進められた。教育相談は,9月から行い約100件に達したが,逐年件数は増加の一途をたどった。教育資料関係は,図書,資料の収集,研究物の展示,紹介,作成,配布と多面的な活動が行われたが,特筆されることは「福島県教育史」本巻5巻,資料11冊が刊行されたことである。これらの事業ならびに運営は,年を逐(お)って定着していったのである。今後の展望としては,
研修については,実績と反省に立った計画の下に年度の重点を定めて実施する。
教育研究については,研修の陰にその影を薄めることのないよう,いっそう重視して推進する。
教育相談は,間題発生が質量ともに増大する児童生徒の実情に鑑(かんが)み充実強化する。
教育資料については,特に力を入れ,教育関係資料(たとえば学校建築の資料なども)をあまねく収 集保管して利用に供するなど,教育資料センターとしての性格と機能を強化する。 等を挙げることができるであろう。

最後に,教育センターが本県の教育研修,研究の中核としての使命を着実に果たしつつある現状を喜びとすると同時に,今後ともいっそう発展充実して行くことを衷心より念願する次第である。


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