福島県教育センター所報ふくしま No.50(S56/1981.2) -014/042page

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最後に自主性であるが,前述したように,自発性や自律性を基礎とし,集団の一員として集団の中で自己を正しく生かす過程で育ってくる。したがって自主性を育てるには,基礎概念の吟味を十分に行い,共通理解をはかったうえでの指導が必要であると考えられる。

よく,生徒の努力目標に,「進んで係の仕事をやろう」という一見,自主的にみえる目標がかかげられることがあるが,その場合も,生徒の要求が,「しかられたくない。」「先生を喜ばせたい。」という他律的なものであるなら,自主性が育っているとは言えないのではないだろうか。

(2) 学級集団に対する所属感と連帯感を強めたい

学級集団に対する所属感や連帯感を育てるためには,集団そのものが明るく楽しいふんい気であること,集団としての目標が各生徒の基本的な要求の充足にかかわっていること,生徒各自がこのことを理解し,その達成に努力すること,生徒相互に敬愛し,信頼し合い,成員各自が集団の中で安定感をもっていること。

さらに,生徒と教師の間にも信頼と親愛で結ばれた望ましい人間関係が確立していることが必要であろう。以上のことを小学6年生の女の子の作文で探ってみよう。

友達ってなんだろう
     田島小学校 6年2組 渡辺T子

 私は,6年聞を振り返ってみて,「友達ってなんだろう。」と思いました。私は毎年そうですが,一人か二人ぐらいしか友達をつくりませんでした。それでみんなの中にとけこもうとせず,いつもその人といっしょでした。
 そのためか,声も小さく,家に帰ってもテレビや人形遊びで過ごし,夕食の時も,母とは話をしますが,その他の人とはあまり話そうとしません。お姉ちゃんとはまったく話しをしない時もありました。そして,友達とけんかをすれば,長い時は一か月ぐらい話しをしない日が続くのです。そして,いつも,どちらかと言えば,相手からあやまってくるのが大部分でした。あやまろうと思っていても,どうしても「ごめんなさい。」という声が,のどまで出てとまってしまいます。これが今までの私の生活でした。
 それが,6年生になって,O先生という,はきはきしたことばで話し,はつらつとしている先生の姿を見たときは,爆弾でも投げこまれたように思い,とてもびっくりしました。そこで,私は友達のきずなの深さを知りました。みんなが協力しあい,助けあってよいクラスを作ろうとする生活に,誇りを持つことができました。
特に,こわかったあたご山登山でのU君の指示,「右に行け,左に行け,木につかまれ……。」など,荷物をもってくれたS君,私とR子,E子を下までつれていってくれたN君,みんなで出迎えてくれたあの時のみんなの心は,きっと一つになっていただろう。私は,それがたまらなくうれしかった。それを教えてくれたO先生は,私たちの太陽のようだった。
 私は,今まで,友達とはこんなにも強いもので,その人の心をやわらげてくれるものとは思っても見ませんでした。だから,私は,今,一人の人とけんかをしているけれど,自分のけんかが,みんなに害を与えていることを知り,とても残念に思いました。
 私は,けんかをしている友達にあやまろうと思います。意地も外聞もすてて,たった6文字の言葉,「ごめんなさい。」と,すなおに言おうと思っています。そしたら何かが,ふっきれるかもしれません。

まずはじめに,この文の中にT子さんが学んだかけがえのない人間関係をとらえてみたい。


みんなが協力し合い,助けあってよいクラスを作ろうとする生活に誇りを持つことができたと, 学級集団に所属することへの喜びをのべていること。

「自分がけんかをしていることが,みんなに害を与えて,すまないことをしているんだ」と,集 団生活の中で果たさなくてはならない役割や,必要性,連帯感等を自覚してきたこと。

「ごめんなさい」と,あやまろうとしていることは,より一層安定した形で集団生活をしたいと 本人が望んでいることなどをあげることができると思う。

次に,「私たちの太陽のようだ」といわれたO先生は児童にどんな指導をしてきたのだろうか。たぶん前述の指導の原理をふまえ,個々の児童のもつさまざまな感情をよくみつめ,大切にしてきたのではないか。

すなわち,生徒には,友人から排斥されたり,嫌われたり,無視されたりするのではないかという不安やおそれがある。その一方では,友人に認められたり,友人が真剣に考えてくれてうれしいという喜びの感情もある。これらの感情をしっかりうけとめながら,それぞれの集団活動で,児童が主体的に行えるように指導してきたのだろうと思う。

2.話し合いの深め方と教師の助言指導のあり方

(1) 話し合いと人間関係

学級での人間関係は生徒相互の関係と生徒と教師


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