福島県教育センター所報ふくしま No.50(S56/1981.2) -015/042page

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との関係であることは明らかである。そのうちの生徒相互の人間関係の背景には次のような次元やレベルで,さまざまな相互作用が,展開されている。

相手の人間性や,対人感情などとのかかわりである心理的相互作用。話し言葉や,書かれた文章が媒介となる言語的相互作用。言語以外の動作が働きかけとなる動作的相互作用などである。

この3つの相互作用の中で,話し合い活動における人間関係として,もっとも基盤となるものは心理的相互作用であり,感情関係である。この関係で問題にするのは,話し合っている過程で生じる感情の相互作用ではなく,話し合う以前にすでに作られてしまっている感情の相互作用である。このことを生徒の声で考えてみたい。たとえば,

「あの時,A子さんは黙ってしまいました。みんなは,あの時,言えばいいのに,と言いますが,A子さんは言いたくても,言えなくなったのです。私は,A子さんの気持ちがよくわかりますし,言ってほしいと言うみんなの気持ちもわかります。」この場合,生徒たちは,話せない事情を察してほしいとの願いがあることは当然としても,それだけでなく,言いたくても言えないような空気をもつ学級への抗議を深層心理としてもっており,もっと明るい,暖

か味のある学級であってほしいと言う願望をあらわしているのだと判断すべきであろう。このように生徒の願いは必ずしも,ストレートに出てくるとはかぎらない。心理的相互作用,感情相互作用は,ある時には理解できないような気まま勝手な行動になったり,反抗の形であらわれたり,屈折してでてくるものである。

これとは反対に,好ましい人間関係ができている場合には,たとえ相手の発言の内容が不充分で理解しにくい表現であっても,聞き手はこれを好意的に解釈し,「君のその気持ちはわかる。」などと相手にもう一度わからない点を問い正したりして,その違いを積極的に補おうとする。このような支えあう雰囲気のなかでは,学級生活への願いを自分から掘りおこし,明るい学級を作っていく必要性を意識してくるので,語し合いも活発になる。そこでは,心の深層にある学級への願望などもおさえておくのではなく,この問題は,話し合いの議題に出して解決しなくてはならないという感情が高まり,自分と学級とをつないで感じとる力,(われわれ意識)が育ってくるものと思考される。その際に話し合いの基盤となるものが,信頼と愛情の人間関係であろう。

(2) 自已理解とグループ内の相互作用

心理的相互作用ではもう一つ,よく「グループ内で話し合ってください。」という方法がとられるが,そのときに,グループ内での相互作用に,「自分は……である。」と言う,自己概念が,どのように作用するのか考えてみよう。

このことについて,CPSI理論,(社会的対人相互作用の循環過程論)では,次のように論じている。

グループにおける各メンバーの社会的位置づけは,比較的早いうちに固定化する傾向がある。

CPSI理論を分析してみると,次のようになるものと考える。非常に不安定で,引込み思案であり,あまり活発にグループ活動をしない生徒は,グループによっては,拒絶はされないが無視されていく。したがって,ますます引込み思案となり,グループ活動に参加できなくなる。

また,非常に活発で,攻撃的で,敵意をもっていたり,あるいは批判的な生徒は,グループから抵抗を受けた'り,拒否されたりするので,ますます攻撃的になっていく。これは循環過程であるから,どこから始まるというものではないが,このことを具体例で説明してみよう。

(不安定で引込み思案な生徒が,班の係をきめる話し合いへの参加のしかた。)

A メンバーの内面的過程









自分はこういう人間だから,グループの中ではいつもこういうふうに取り扱われている。
グループは自分の話などに目を向けてくれないだろう。
でも,どんな係りをやりたいのかと,聞かれたら何と答えようか。


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