福島県教育センター所報ふくしま No.50(S56/1981.2) -017/042page

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学習指導と教材

小学校教材 国語科

心情を読みとらせるための基本的発問の工夫

教科教育部  荒川 俊一

1.はじめに

国語科の授業においては,教師の発問のよしあしが授業の成否を左右するといっても過言ではないであろう。そこで,本年度の小学校国語講座の演習においても,発問の研究を重視し,文学的文章の教材研究の一つに基本的な発問の研究を取り入れてきた。そして,演習の反省会では,多くの先生方から指導目標にせまる発問,子供の思考を深める発問のむずかしさが語られた。

さて,本年度における小学校国語講座のまとめの一つとして,童話・物語における登場人物の心情を読みとらせるための基本的発問はどうあるべきかという視点で,教材を「太郎こおろぎ」(今西祐行作光村3年上)に求めて,具体的な発問のあり方を検討してみたい。なお,ここでいう「基本的発問」とは,指導目標を達成する過程で学習を支え,方向づけるはたらきを持つ発問という意味である。

2.心情を読みとらせる基本的発問

(1) 読みのめあてと密接につながる発問

発問が指導目標の達成と密接にかかわることはいうを待たない。指導目標にせまるためにいかに発問を考え,組み立てるか,教材研究の重要なポイントの一つになるのである。例えば,童話や物語の授業で,登場人物の心情を読みとらせる場合,まず,本時に学習する場面(文章)の中から,どの人物のどのような心情を読みとらせることができるかを取り出し,それを児童の「読みのめあて」としておさえたい。そして,その「読みのめあて」にせまらせるための基本的発問を準備し,精選し,授業の過程に適切に位置づけていくことが必要である。一時間の授業には,場面(文章)によって一つの読みのめあての場合もあるだろうし,2〜3の読みのめあての場合もあるだろう。この読みのめあての追求によって,本時の学習が成立し,本時の学習目標が達成されていくものと考える。

(2) 文章表現にたちかえって考えさせる発問

登場人物の心情を読みとるということは,文章表現の一つ一つに目を向け,微妙な表現・描写の中から,その人物の心情を豊かに想像することである。ややもすると,文章からはなれて,概念的なとらえ方になりがちであるので,常に文章表現にたちかえって考えさせるような発問を工夫していきたい。

(3) 表現と理解の関連を考えた発問

学習指導要領の指導内容は,「表現」・「理解」・「言語事項」の2領域1事項としておさえられているが,これらは,授業の中ではそれぞれ別個の指導内容ではなく,お互いがつながり合い,ひびき合い,ときにはとけ合っているものであろう。心情を読みとらせる授業でも,人物の気持ちを想像して書く活動を組み入れて,じっくりと考えさせ,発表させるようにしたい。必要によっては,音読・朗読とつないだり,動作化をとり入れたり,劇化に発展させたりして,多様な活動と結びつくような発問を工夫していきたい。

(4) 概念的ことばからの脱皮をめざす発問

「人物の気持ちは,どこに表れていますか。」「この表現から,どんな気持ちがわかりますか。」といった発問をどんどん繰り出して,児童を受け身の答え役にしてしまう授業を見かけることがある。このような授業では,人物の心情に深くせまることがむずかしいのではないだろうか。基本的発問は少なくていい。一つの発問によって,児童一人ひとりが真剣になって考え,それぞれの自分の考えを発表し,教師は聞き役になるような発問を工夫したい。語い量の少ない児童に,心情の微妙な動きを読みとることを要求してもむずかしく,概念的なとらえ方になりやすい。そこで,人物の会話や行動にもう一度目を向けさせたり,類似体験を発表させたり,内言を表白させたりして,共感的な読みとりをさせ,概念的なことばではなく,自分自身の具体的なことばでと


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