福島県教育センター所報ふくしま No.50(S56/1981.2) -035/042page
[3] さらに学習を個人の段階に留めず,教室全体の活動にするために共通のよりどころが必要で あり,よい学習課題が与えられれば授業の効率が高められると予想される。 以上により“国語科「現国」における課題”をわれわれの共同研究のテーマとしてとりあげ,実践を通して深めてゆくことにした。
(2) 研究のねらい
科内での話し合いの結果,大きな研究主題に対して,生徒の実態・必要度に即した「ねらい」を次のようにした。
[1] 各学年ごとに段階を追って,国語能力を発展的に高めること。
ア. 1学年では学習のめあて・手がかりを提示し,準備をもって授業に臨むための予習課題 を与える。
イ. 2学年では予習課題を自分なりに考え解答して授業に臨み,授業内で確かめ,推考し, 新たな視点で考え直すための課題を与える。
ウ. 3学年では読み進めながら考えて解く授業内課題を与え,読解力・鑑賞力・自分で説明 して答えることができる表現力を高めることを目ざす。 [2] さらに,課題を与える側としては,望ましい課題授業の構造について研究する。
[3] (1)の目標を達成するため,課題の適否が追究されねばならない。つまり課題の質の問題である。当然のこととして課題の与え方が関連する。
[4] 課題を与えた授業の成果を間うための追跡が必要である。プリントの回収点検,感想文,確認テスト,アンケート等で追跡し,それを分析し次の課題への反省,改良の手がかりとする。
(3) 研究仮説
学習課題と教師の適切な助言が行われたとき,次の変容がみられよう。
[1] 生徒の積極的能動的な授業参加がみられ考える力が増し,発言がふえ,文章表玩による発表が活発になる。
[2] 学習意欲も高まり,自学自習の習慣がつく。
[3] 教師側も,課題の吟味検討のプロセスから教材研究の深度が深まり,相互研修が本格的に行われるようになる。
[4] 国語における「よい学習課題とは何か」の考察の機会となる。
(4) 研究内容
以下,各学年の報告に先立ち,53年度の本校での「現国」使用教科書をあげる。
一年 角川書店 現代国語 一改訂版
二年 同 現代国語 二改訂版
三年 明治書院 現代国語 三新修版なお蛇足ながら,すべての教材について課題学習を行っているのではない。各学年,年間3回,評論,文学,随筆を中心としている。(字数の関係で一・二学年の報告は略す。)
(5) 第三学年の課題実習における実践報告
(6 )研究成果と今後の課題
1年半にわたる実践を通じ,科内で評価し合い確かめ合ったことは次の通りである。
「研究のねらい」「研究仮説」と照応させて検討してみると,"意欲のみえる授業"が実現されつつある。教室全体で考えようとする空気・課題を解こうとする姿勢・発言や文章による発表の増加がみとめられる。
自学自習の習慣がつき(一年),予習から授業への訓練に成果がみこまれ(二年),理解・表現・鑑賞力の向上(三年)が,追跡調査や観察結果からわかるのである。しかし,予習課題から授業内課題へ系統化を図った点については,上記のように成果を確認しつつも疑問も提起された。
次に教師側の結集が強まり,教材研究の深度を深めつつ,課題を与えた授業実践のための相互研修が活発に行われた。追跡調査も次の課題の改善のため,