福島県教育センター所報ふくしま No.50(S56/1981.2) -036/042page
丹念になされた。これらは意義ある成果といえよう。
今後に残る問題として,
[1] 設問の構造化・課題を用いた授業の構造化・学年の発達段階に対応した目標の系統化を図ること。
[2] 与える課題にとどめず,生徒側から生まれる課題へ,その導き方の研究。
[3] 教師間の教案提供と相互の授業研究,などが考えられる。
これらを新たな視点で研究テーマとし,これからも真摯(し)な討論を重ね,実践をつづけたい。
※課題の実例は頁数の関係で省略する。◇社会科
世界史を中心に科目間の有機的つながりをもった教材の精選はどのようにしたらよいか。 (1) テーマ設定の理由
52年度のアンケートから世界史をわかりやすくするためには教材の精選と内容の系統的把握の必要性を痛感し,教師側が直面している問題(3単位と多量な内容,他科目との関連)とあわせて,地理,倫理・社会,世界史,日本史,政治・経済の各科目を有機的に関連させながら教材の精選をどのように行うかを研究することになった。
(2) 研究の経過と方法
[1] 研究の焦点を定めるために「産業革命」にしぼって研究を進める。
[2] 世界史と他科目での扱い方の相異点を明らかにしながら補助教材で相互の関連性を追究する。
[3] 科目間の進度や教材配列のちがいも問題となるが今後の課題として研究を推進する。(3) 社会科教科構造基本図
[1] ――は特に世界史〈産業革命〉との関連を示す。
[2] ( )は単位数(4) 各科目の研究(一,二年関係のみを報告)
〔地理〕
A.教科書内容の整理
本校で採用した地理A教科書「高校新地理A新訂版」(二宮書店)から「産業革命」に関する事項を列挙し研究の資料とした。世界の人口(増加,都市集中),村落・都市(都市の発達,工業都市,巨大都市),農牧業・林業・水産業(農牧業と経済の発展,企業的農牧業),鉱工業(発達,立地,資源),交通・通信,国土の開発と保全,世界貿易など,産業革命との関連での説明が多いことを確認した。
B.地理Aでの取扱い
(1)産業革命によって成立した地理的事象([1]〜[4])
(2)産業革命によって変化した地理的事象([1]〜[4])
C.まとめ
地理の学習においては,世界史で学ぶ内容をふまえ,それが現代世界の地域構成に与えた影響について独自の立場から産業革命に迫ることによって,世界史学習の内容との有機的関連を一層深めることができる。〔倫理・社会〕
産業革命は学問思想面でそれ以前の成果に基づき,その成果を継承しながら展開され,また産業革命による学問政策の新しい展開がみられた。倫・社では産業革命を生起させた前提・展開・結果の三段階を設定し,それぞれの課題を解決する方法と理論を構築した思想を中心に研究した。
前
提(1)近代科学の萌芽(ガリレイ,ニュートン) (2)イギリス経験論(べーコン) (3)大陸合理論(デカルト)
展
開(1)古典派経済学(アダム=スミス) (2)功利主義(ベンサム,J・S・ミル) (3)自然法と社会契約(ホッブズ,ロック,ルソー)
結
果(1)空想的社会主義(サン=シモン,フーリェノ,オーウェン) (2)科学的社会主義(マルクス) 〔世界史〕
(1)生徒への「事前学習用プリント」(補助教材)
内容は,導入段階及び産業革命学習の予備知識の整理として「イギリス主要部市と産業」「学問・思想の発達」「陸業革命の影響」「19世紀の思想」について地理と倫・祉の教科書でまとめさせた。
(2)学習指導案(略――他科目と関連事項のみ)
[1]指導計画及び時間配当[2]留意した点
イギリス産業革命の要因(1時間),イギリス産業革命の展開とその波及(1),産業革命の社会的影響(1)
・ 要因の学習で「資源の産出地や産業の発達について地理学習と関連させながらつかませる」「学問・思想の発達について倫・社の学習と の関連で理解させる」 ・ 展開の学習で「交通運輸部門の革新が国内市場や海外市場との関連でいかに重要な役割を果たしたか,地理学習を復習しながら理解させる」 ・ 社会的影響の学習で「政治・総済との関連もあり,資本主義の基本的特徴の理解にとどめる」「人□移動,工業郁市の発達など地理学習 の復習をさせながら産業革命の意義を再確認させる」「功利主義や社会主義の思想内容については倫・社で学習するので,ここでは思想 家と改革との関連にとどめておく」 (5) まとめ
[1] 定着度
52年度実施の診断テストと同じ内容のものを実施したが,産業革命の経過や結果についてはほぼ同じだが地理的事項に関しては結果が非常に良かった。
[2] 授業について
事前学習は半数近くがやり,地理的事象の変化に関するOHPの利用は「わかりやすかった」と言っている。