福島県教育センター所報ふくしま No.50(S56/1981.2) -038/042page

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◇理科
基本的な概念や原理を広い層の生徒に理解させるにはどのように指導したらよいか。

次の4項目を設定して,各教科それぞれの立場で研究を進めた。
(1)教材の精選による下位目標の設定 (2)課題学習豆テスト(3)個別指導(4)実験指導

〔物理〕
豆テストを中心とした課題学習,個別指導に関する研究を進めた。2年生を対象に,[1]授業のみ,[2]豆テストを実施,[3]豆テスト後成績不振者に個別指導の3群に分けて指導した結果を2学期以降の定期考査で比較した。[1],[2]に大差はなかったが,[3]では著しい向上がみられた。この結果をふまえ,一学期の中間考査後から[3]の方法で指導したが,期末考査には大きな効果がみられた。今後の課題としては,実験指導の問題,個別指導に関する教師の負担や放課後の時間の活用の問題等が残されよう。

〔化学〕
次の5項目を重点として指導の改善を図った。[1]課題学習の強化。[2]豆テストおよび机間巡視による個別指導の強化。[3]教材の精選。[4]実験を中心とした授業。[5]各テストの検討・分析。この結果,[1]では化学に関する自学自習の時間が増したし,課題提出の状況がよくなった。また,理解できていない点がわかり,課題で復習した内容の定着度は高くなった。[2]では理解度を把握することができ,指導の反省や授業を進める目安が得られた。また,個人の能力に合わせて指導することができ,意欲のない生徒には注意を喚起することができた。さらに,その場で理解度がチェックできたし,生徒間で教え合い,授業が活発になった。[3]では時間的ゆとりが生じ,指導の幅を広げることができた。[4]では真剣な態度と充実感があった。[5]では指導法改善の手がかりを見つけることができた。今後は,さらに落ちこぼれ防止とグルーブ学習について掘り下げて行きたい。

〔生物〕
「豆テストおよび生徒実験の指導をどのようにしたらよいか。」という副題のもとに研究を進めた。豆テストでは,回を重ねるに従い成績の向上がみられた。豆テストは生徒に刺激を与えるという点では効果的である。生徒実験(カタラーゼの実験)の指導では次の3形態に分けて指導した。(A)実験の準備から手順,操作,考察までのすべてを指示通り行ういわゆる教師誘導型,(B)実験の手順,操作考察までをグループ内で討議して進めて行くいわゆる探究型,(C)問題は提示するがそれを検証するための手順や操作はグループごとに自由に行う(A)と(B)の中間型。実験考察の定着率を知るため2ヶ月後に次の項目に関する簡単なテストを実施した。[1]実験結果が十分に観察されていたか。[2]比較定性的実験の結果が理解できたか。[3]データからカタラーゼの特性や無機触媒との違いが理解できたか。[4]カタラーゼの生物学的意義についてある程度推理できたか。それによると,[1]については[4]型の定着率が1〜2%上まわる状態であったが,[2],[3],[4]については(C)型の定着率が10%前後高い結果が得られた。今後さらに細かな分析をし,検討して行きたい。

〔地学〕
本来3単位であるが,2単位で実施しているので,「学習項目の精選」にしぼって考えた。(A)基礎的で量も重要な項目,1.地球の構成,2.地球内部のエネルギーと地殻の変化,3.太陽エネルギ一,4.太陽系の構成,5.恒星と宇苗進化。(B)基礎的なもので取り扱いたいが,時間的に不足する場合略してもやむを得ない項目,1.地球の進化,2.太陽エネルギーのうち大気,水の環境とそのはたらき,3.宇宙の構成。(C)易しすぎたり逆に難しすぎたり,あまり専門的すぎる項目,1.序論,2.地球の運動,3.太陽系の構成のうち太陽系,4.地球の進化。以上のように分類してみたが,地質,気象,天文の各分野相互の統一性に欠けるきらいがあるので,全体を通してエネルギーの流れという概念の中でとらえたい。

まとめ

課題学習,豆テスト,個別指導,教材の精選等の指導法の改善の結果,以前にくらべ生徒間に自主的な学習意欲がみられるようになり,自然科学への興味,関心も高まった。また,この研究を通して生徒との対話を深めることができたのは,大きな収穫である。

※英語科については,紙面の都合上略す。

5.成果と今後の課題


[1] 生徒の実態に対応する指導のあり方(個人指導や課題学習など)について再確認がなされ, 授業の実践に変容がみられた。
[2] 各教科の研究の推進に関連し,教科会等に活発な動きがみられ,専門職としての資質の向上 に役立った。
[3] 全教科が,研究主題という一つの方向に向かって努力を傾けたことは,職員の結束をうなが し,共通の広場を確認し,協力体制の確立に役立った。
[4] 質的に多様で,意欲の乏しい生徒をかかえているが,この研究によって,生徒はやや受身の 姿勢ではあるが学習意欲の向上のあとがみられた。
[5] 学習指導にかかわる問題として,成績評価,通信表などについて,改善の方向で再検討がな された。
など,不十分ながら一応の成果としたい。

(2) 今後の課題として


[1] 生徒の自発的,積極的な学習意欲の向上をめざす指導のあり方の探究。
[2] より良い学習指導の研究をめざし,関連する設備の充実,視聴覚機器の活用などに関する研 究の推進。
[3] 学習指導,生徒指導,進路指導の相関をとらえ,一体化をはかる指導体制のあり方について の検討。


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