福島県教育センター所報ふくしま No.51(S56/1981.6) -012/042page
教科外教育 道徳教育全体計画の改善
経営研究部 佐 藤 嘉 之
1.はじめに
道徳教育の全体計画は、その学校の道徳教育に関する基本的な方針を示すと同時に、それを具体的に実現し、道徳教育を意図的・計画的に推進するための総合的計画である。しかしながら、全体計画は、とかく、どこの学校にもあてはまるような一般的、抽象的な表現が多く、そのため学校としての課題意識もうすく、特色のない計画となってしまう傾向がある。
学習指導要領の改訂を機会に、道徳教育の全体計画について見直してみたい。2.全体計画にみられる問題点
全体計画の作成にあたっては、地区の広域計画や先進校で作成したものを広い範囲で比較検討することは必要なことである。ただそれが、どんなにすばらしい計画であっても、直ちに自校の計画として利用できるものでないことはいまさらいうまでもない。たしかに、全体計画を構成する基本的な要素はととのえられているが、実態等の検討が甘いため、その学校のもつ特色が明らかになっていないものがみられる。その他、問題点として、次のような点が指摘できる。
(1) 学校教育目標の達成をめざす上から、道徳教育の果たす役割が明らかになっていないもの
(2) 全体計画が、各学年における具体的な計画作成の基盤となることを忘れられているもの
(3) 父母の期待や地域の実態が形式的に図式化されてあるだけのもの
(4) 教師全員の道徳教育についての願いが計画に反映されていないもの
(5) 道徳の時間以外の教育活動の中で行われる道徳教育の果たすぺき役割が明らかでなく、学校としての道徳教育の方向づけが明確でないものなどである。3.全体計画改善の視点
(1) 学校教育目標の達成をめざす計画
道徳教育目標の設定は、教育目標の設定とほぼ同様である。この際、特に学校の教育目標が内包する価値を分析し、小学校28項目、中学校16項目に照合した表現を考えてみる。
次に、教育目標を達成するための道徳教育の果たす役割を明らかにし、めざすべき児童・生徒像を全教師が共有することが大切である。
(2) 自校のおかれている実態をつぷさに検討された計画
道徳教育を効果的に進めるには、なんといっても児童・生徒の実態・地域の実態・教師や親の願いなどを参考に立案することである。ややもすると、市販の道徳性検査等に安易にたより過ぎ、それを自校における道徳性の傾向としてしまう危険性がある。日々、児童・生徒と接している教師の観察こそ大切にしたいものである。その際、学校として組織的・計画的に、観察の観点・調査内容・調査方法等を統一し、ある期間実施することも考えられる。実態に即さない計画は観念の遊戯に堕しやすい。
(3) 全教師の衆知を集めた計画
教科指導と異なり、道徳教育にあっては、協力が得にくいことにも起因し、少数精鋭主義で短期間に作成される傾向が強い。すべての教育活動をとおして行われる道徳教育の推進には、すぺての教師が道徳教育にかかわりあうことを再確認することが大切で、全教師が組織的に役割を分担し、特に、作成過程を大切にしたいものである。