福島県教育センター所報ふくしま No.51(S56/1981.6) -014/042page

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教育相談

家 庭 内 暴 力

教育相談部  横 内 直 典 

 1.家庭内暴カの増加
 最近、当教育センターにも、家庭内暴カについて来所相談する事例が出てきている。家庭内暴力は家庭内にのみみられる現象であり、よほどのことがないと、外部には出にくいものである。
 親が思いあまって、教育センターや児童相談所を訪れるような場合は、相当進んでいる重症とみてよいであろう。また、実際に起こっていても、表面化していない事例も相当数あると思われる。

 2.子供の特徴
 警視庁の江幡玲子氏は、家庭内暴力を起こす子供の特徴として、1 外では良い子で他の子供と同じぐらい問題がないようにみえるのに、家の中だけで乱暴する。2 比較的優等生かそれに近い勉強のできる子供である。3 いわゆる非行的要件が外では考えられないことなどをあげている。
 すなわち、1では、問題意識をもたない第3者からみれば、問題のない良い子なのである。しかし、対人関係のまずさ、積極性・自発性の乏しさなど、家庭の外にあっては、実は問題児なのである。2では、かってはたしかに優等生であったが、環境が変わり、その中で成績が思うようにあがらなかったり、壁にぷつかって成績が下降してきたり、意欲をなくして勉強をしなくなったりして、挫(ざ)折を感じている。3についても、生活態度の乱れと結ぴついた反社会的非行も考えられるが、非社会性が案外顕著にみられるのである。
 そして、これらのことは、家庭内暴力を起こす子供の特徴というものよりも、登校拒否、自殺、シンナー単独吸引など、神経症的行動や非社会的行動を起こす子供と同様の傾向を示しており、動機や対象が異なっているものの、基本的には同じ行動の原理によるものであるといってよい。
(1) 子供の状態像は
 この前提にたって、家庭内暴力を起こす子供の状態像(人格像といってもよい)をみると、次のような共通の傾向をもつものが多い。
 知的能力が高く、家庭外にあっては温和、従順、素直であるが、積極性・自発性・自律性に乏しく、自信がなく、引っ込み思案で、他人との相互関係をもつことが下手なため、友人関係は孤立的である。また、未熟な自己中心性がみられ、見栄っぱりで顕示性が強く、過敏、神経質なこともあって、気にしたり、傷ついたりしやすい。反面、小心、内気なために、自分の感情をおさえ、「引きこもり」の機制をとりやすい。
(2) 学校生活では
 家庭内暴カの子供の学校生活をみると、おとなしい問題のない子供とみられることが多い。しかし、それは成績が良いし、けんか・反抗もしないし、受動的だが与えられた事はきちんとする等、教師からみれば手のかからない子供だからである。しかし、子供を内面的に理解しようとする教師からみれば、自発性・創造性に乏しい、友人がいない、集団活動に積極的に参加できない等、社会性に間題があるといっている。
 家庭内暴力を起こす子供には、このような傾向がおおむねみられるが、このなかには神経症的かつ藤が強いものと、「わがまま」が中心のタイプとがある。後者の場合には、神経症的かつ藤がほとんどみられず、幼稚かつ依存的で、耐性の低い未熟さが問題となる。気の弱さと見栄っぱりのため、家庭外では問題を起こさないが、学習面では知的能力に比して学習能力がふるわない子供が少なくない。

 3.家庭内暴力の子供の心理
 来所相談の事例からも、どうして家族に暴力をふるうのか、その時は自分ではっきりわからないと言う。直接のきっかけは何かあるにせよ、意識的な目的的行動として行われているのではなく、やり切れなさ、不安、いらいらを自分でどう処理してよいかわからず、家族にぷっつける感じが強いのである。
 このような事例をとおして明らかなことは、だめな自分のやり切れなさを、暴れることによって発散しようとする気持ちと、そのような自分をつくった


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