福島県教育センター所報ふくしま No.52(S56/1981.8) -002/034page

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中学校・高等学校教材

形成的評価とそれを取り入れた英語授業

教科教育部  大河原 博美

1.はじめに

日々の教授活動における評価の重要性はいうまでもないが,とかくするとその評価は結果のみを重視し,しかもそれは,教師側からだけの評価に終わりがちである。生徒の到達すべき目標を明らかにしないまま,教師は一方的に学習内容を指導し,生徒は単にこれを受けていくという一面的な学習になりやすい。そこには,いわゆる“落ちこぼれ”“落ちこぼし”現象が生まれるということは,当然考えられる。教師は,もっと生徒の可能性をひき出し,意欲を育てるための手だてをこうずべきである。

そこで,教師は,生徒が授業の中で,学習内容について,どのように理解し,どこにつまずきをもっているかを常に把握しながら指導するという学習過程の中での評価が重要になってくる。

このような観点で,いわゆる形成的評価を取り入れた授業のあり方を英語の授業をとおして考察していきたい。そこで,まず形成的評価のもつ意味から考えていくことにする。

2.形成的評価の目的の確認

形成的評価を導入することにより,何を変えていこうとするのか。

(1)一つは,着実に,確実に学力を形成していくということである。学校は公教育の機関として,すべての生徒に一定レベルの学力だけは保障する責任があり,これを形成的評価の機能を駆使することにより現実のものとするということである。言い換えれば学習活動をただなんとなしに進めるのではなく,その活動を通じて達成することが期待される最低限の成果について,さまぎまな段階で確認を行い,それに基づく適切な措置をそれぞれの段階に組みこんでいくことにより,現実に可能なものにしようということである。

(2)次に学習活動のあり方を生徒にとって無理のないもの,適切なものにしていこうということである。つまり,形成的評価の機能を重視することにより,授業展開や指導計画を生徒の反応や目標達成状況をみながら,その時々に最適なものへと修正し,改善していくことが可能になるのである。

3.形成的評価の実践の手順

(1)まず,第一歩として必要なことは,教育目標,学習目標の分析であり,そして分析された小単位の形成的目標を学習ユニットに設定することである。この際,とくに注意しなければならないことは,本時中心主義というのではなく,数時間のまとまり(学習単元)を基本的な単位として扱うということで,これが形成的評価の重要な観点である。それで,その単元において達成されるべき教授・学習目標の洗い出しがなされなければならない。そして,形成的目標相互の階層関係が明らかにされなければならない。形成的目標は「(教科内容)+(目標行動)」という二つの要素からなっており,それは,内容と行動マトリックスに配列されることになる。その際,単元のポイントにもとづいた目標が設定され,生徒が最終の目標に達するため,あらかじめ知っていなければならない事柄は何であるか検討される。これらにもとづいて形成的テストが作成される。

(2)このような手順でなされる形成的評価はどのような情報をもたらすのであろうか。形成的評価において重要なことは,評価の結果にもとづいて,何を重点的に学習させるかを発見することである。

[1]生徒側から

ア.生徒は形成的評価により,どの要素の学


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