福島県教育センター所報ふくしま No.52(S56/1981.8) -009/034page
教科外教育 創意活動の時間の運営
経営研究部 小林正守
1 はじめに
教育課程審議会の答申は,「自ら考え正しく判断できる力をもつ児童生徒の育成ということを重視しながら……」という前提のもとに,周知の三つのねらいを明らかにした。
この答申の精神ま,従前の学校教育が全人数育という目標はありながらも,知育偏重の考え方に陥り受験競争の過熱化と相まって,断片的な知識の詰め込みや記憶中心の学習となっていった結果,いわゆる「落ちこぼれ」と呼ばれる学習に不適応な児童生徒を数多くつくり出してきた反省の上に立っている。
同時に新しい21世紀に生きる子どもたちに,自主的創造的に生きるカを培わなければならないことを示唆したものといえよう。
この答申を受けて作成された新学習指導要領の大きな特徴は,各学校が創意を生かした教育活動ができるよう各教科の年間授業時数を削減し,その時間の活用については,特に基準を設けず各学校の自由裁量にまかされたことである。
これは,
(1)児童生徒が心身ともに安定した状況のもとで,より充実した学習が行われるようにする。
(2)各学校における教育活動が,創意を生かし,それぞれの地域や児童生徒の実態に即して適切に行われるよう弾力化を図る。
(3)教科内の指導だけでなく,教科外の指導も重要視するとともに.学校教育外のことなどについても必要に応じて積極的にとり入れていけるようにする。ことなどがねらいである。
これらのねらいを達成する一つの方法として,いわゆる「創意活動の時間」があげられる。
この時間をどう位置づけ,どう運営していくかは各学校における課題の一つといえようが,これを運営していくうえでの問題点や留意点について,いくつか述べてみたい。
2 創意活動の時間設定上の留意点
埼玉県立教育センターの杉田儀作氏は,雑誌「特別活動」(4月号)の座談会で次のように述べている。「……(学校裁量の)時間活用の順位を決めることが大切です。一番目は平凡ですが授業時間にゆとりをもたせなければならない。二番目は日課にゆとりをもたせる。三番目は学級担任とのふれあいの時間を多くする,そして四番目が特別活動を重視する……。」
要するに,削減された時間分を「創意活動の時間」として何か新しいものをやらなければならないというのではなく,学校生活全体を見なおした場合,従来多忙・過密で十分機能が果たせなかったものをまず充実させ,さらにゆとりがあればそれを発展させたり,あるいは新しい計画を折りこんで行こうとする考え方が大切であるというわけである。
答申の趣旨もまた,あらためて述べるまでもないが,「学校教育全体に創意を生かしなさい」ということであって,「特に創意の時間だけを工夫しなさい」というのではないのである。
当審議会長高村象平氏も「……ゆとりの時間の設定は4時間の処理の問題ではない。授業方法,指導方法全般にかかわる問題なのである。この根本を忘れて,他校に劣らぬ新考案を実施することに精を出すのは,子どもへの温かい教育を第一にすることを求め,彼らの人間形成に助力することを期待している新教育課程の本旨の誤解以外の何ものでもない。」と述べていることに留意すべきである。
3 創意活動の時間運営上の留意点
上に述べたように,何かを新しくとり入れたために学校生活にゆとりがなくなってしまったのでは論外であるが,ゆとりができて,月に一回でも二回でも創意を生かした教育活動を実施しようとしたときに心がけなければならない事項について,いくつかあげておく。