福島県教育センター所報ふくしま No.52(S56/1981.8) -012/034page

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Y-G性格検査に見られる問題となる性格特性  DATにみられる問題分布
図1 性格検査にみられる問題となる性格特性と非行予測検査での問題分野とのかかわり
―D類型(対象生N=7人)……B類型(対象生N=4人)
図1 性格検査にみられる問題となる性格特性と非行予測検査での問題分野とのかかわり

的で,自分の意にそわないと直情径行的な行動で,不満を攻撃的に表す適意発散型である。

両類型に共通する点は,内省,衝動,主導性の各因子に問題が認められることである。

これらの性格特性の歪みと非行予測検査(DAT)における問題分野とのかかわりを上図からとらえてみると、O,Co,Ag,Rに、より多くの問題をもつB類型の生徒に不適応感が顕著である。したがって,すべての生徒が,適応(M),性格(P),規範逸脱(N)の各傾向全分野に問題をもつMNPタイプとなって表れ,反社会的問題傾向得点値も高い。

両類型ともに比較的数値として低くあらわれた自己不適応は,本人が劣等感や,自己無価値感,自己不当意識に問題を持たないということであるが,性格検査におけるI(劣等感小)とのかかわりから、自己過大評価からくる主観的な自己本位行動にはしるという危険性が潜在しているとも解釈できる。また,性格分野にみられる問題は,性格検査における,R,A,Sなどと関連し,意志薄弱,耐性欠除,自己統制力欠除といった不適応性格特性にかかわる問題である。

両類型に属した全員が問題をもつ規範逸脱分野は.一般的な社会規則や基準,道徳的観念の乏しさからくるものに加え,「中和の技術」としての5つの考や態度を学んでの結果とも考えられる。

4 親の教育態度からみた問題

人格はさまぎまな人間関係の中で自我を成長・発達させながら形成されていく。人格形成に大きな役わりをもち,子供の生活の中核となり心のよりどころとなるのは,親と子の相互関係である。そこで親子関係診断テストから養育上の問題をみるためにまとめたのが表2である。

親子関係において,最も望ましくない態度を危険地帯,望ましくない態度を準危険地帯として表したものであるが,特に矛盾・不一致,拒否,干渉,厳格の項に多くの問題をもつ親が多いことが指摘できる。子供にとってみれば残酷型といわれるタイプでもある。これらの養育上の問題は,子供にとって緊張と不安,混乱を与え情動上の障害をもたらし,子供自身が行動の基準を学べず,心理機制として,責任の転稼,注目索引,非行による代償的満足を得る行動,権威への敵意や反抗を示すことによる自己満足等の反社会的行動にはしる性格の歪みを生じさせている。

表2 田研式親子関係診断テストからみた養育上の問題  ・対象父母14人

  積極的拒否・ 消極的拒否・ 厳格・ 期待 干渉・ 不安 溺愛 盲従 矛盾・ 不一致・
険危 8 6 3 5 3 5 2 3 6 5
準危険 3 3 5 2 6 2 3 3 6 3
11 9 8 7 9 7 5 6 12 8
79 64 57 50 64 50 36 43 86 67

5 まとめ

面接当初,つっぱりをみせる生徒たちも,不満や不安感を本人のレベルにたって受容し,共感的に接すると態度が軟化してくる。そこから自分を素直に見直し自己洞察力を高め,誤まった支配的価値体系を変え,肯定的な自己存在感を確立しはじめる。このことからも,まず教師や親は,すべての子供は,変容し伸びる存在であるという認識と愛情をもち誠実に摸することを基本としたい。


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