福島県教育センター所報ふくしま No.52(S56/1981.8) -014/034page
ら,身のまわりの事象に五感を働かせ,それをことばでスケッチさせれば,ふくらみのある文・文章を書くことができるであろう。
○「五感を働かせる」とは
視覚,聴覚,味覚,嗅覚(きゅうかく),触覚を五感といい,それぞれの感覚を働かせ,事象をくわしく見つめさせること。同時に,これにともない,心的作用をもふくむ。
○「観察観点表」とは
児童に目や耳などを使ってよく観察しなさいと言っただけでは,何を,どのように観察するのかわからない。そこで,次のような表を利用させることによって,観察の観点を明らかにするとともに,比喩(ひゆ),擬態(声)語などを使って事象をくわしくスケッチすることを目的とする。
様子を書く場合の表
給食のおかず「カボチャポタージュ」を食べて
五感 目 口 耳 鼻 からだ全体 観点 物の名 量
形
色
明暗…
味 舌ざわり
歯ごたえ…
音
におい
手ざわり 温度
痛さ…
観察したこと かぼちゃ 多い,大きい
おおぎ形
黄色,ふか緑
あまい
いいにおい
あつい ねばりけがある
擬態(声)語 コリコリとヌルヌル ポタポタ プーンと ネバネバ 比喩 もみじのようなにんじん くりのような
クリームのように
とりもちのように
気持ち・感想 おいしそうな色していないな かぼちゃはあまり好きでないのに
これならもっと食べたい おいしくなさそう ○「文,文章がふくらむ」とは
・一文に使われる文字数が多くなること。
・一文に使われる修飾語の数が多くなること。
・文章全体における文の数が多くなること。
・文章全体における文字数が多くなること。
・文章の内容が質的に向上してくること。○質的な向上を評価する観点
第1段階 五感で認知した事象の表現が少ない。
第2段階 五感で認知した事象の表現が羅列されている。
第3段階 五感で認知した事象が,文としてまとまりよく表現されている。
第4段階 五感で認知した事象の表現が工夫され,自分なりの感想,意見が述ペられている。
第5段階 五感で認知した事象を選択し,表現を工夫しながら主題が明確である。3 計 画
(1)方法 一群法による
(2)対象 6年1組35名 (男17名 女18名)
(3)組織 個人研究
(4)日程[1]第一期 事前研究の段階(6月〜8月)
ア 研究計画の樹立 6月〜7月
イ 実態調査 6月
ウ 研究主題の設定 6月
エ 文献研究 6月〜8月
オ 仮説の設定 6月〜7月[2]第二期 検証の段階 (9月〜10月)
ア 教材研究と指導計画の作成 9月
イ 事前テストの実施 9月
ウ 検証授業 10月
エ 事後テストの実施 10月[3]第三期 整理の段階 (11月〜12月)
ア データの処理 11月
イ 結果の分析 11月
ウ 研究のまとめと反省 12月4 概要と考察
(1)研究の経過
[1]文献研究
ア 文字量の多少は,そのまま作文能力の価値的な意味は示さないともいえるが,文字を書く力,文を組み立てる力,文章としてまとめるというような,作文の基礎的な能力の潜在性をはかるひとつの手がかりとなる。
「小学生の言語能力の発達」
国立国語研究所 明治図書