福島県教育センター所報ふくしま No.52(S56/1981.8) -017/034page
(エ)様子,気持ちの表現のし方の段階別人数
様子を表現した作文 気持ちを表現した作文 段階 5 4 3 2 1 5 4 3 2 1 指導前 0 4 9 16 6 0 6 9 12 8 指導後 7 9 13 5 1 11 7 14 3 0 増減 +7 +5 +4 -11 -5 +11 +1 +5 -9 -8 イ 短文表現テストの結果
[4]結果の考察
ア 量的には,全体の文字数,文字,一文の文字数が増加している。これは,観察観点項目数が増えたことと,それにつれて修飾語を多く使うようになってきたからと考えられる。
イ 直接気持ちを表すことばを使わず,表情や行動をよく見つめ,それを描写することによって,気持ちを表現することができるようになったことも,量的な増加と関係がある。
ウ 質的な観点からみると,比喩や擬態(声)語などの使用数が増えている。また,質的な評価段階別人数構成を見ると,段階が「4」以上の児童は,指導前では17%であったが指導後では51%になった。
エ 様子及び気持ちを表現する短文表現テストの結果,有効度指数が,ほぼ70以上であり,変容が認められる。
オ 上,中,下位の児童の量的な変容をみると,いずれも伸びているが,上位児童の文字数,観察観点項目数の増加がめざましい。質的な変容では,上,中位児童にそれが顕著である。
(3)結 論
文,文章をふくらませるための方法として,まず,観察観点表に,五感を通して認識したことをまとめさせ,次に,認識した事象を比喩や擬態(声)語などを用いてくわしく表現させようと意図して指導してきた。その結果,
ア 量的な面では,文字数,観察観点項目数,文数などに増加がみられた。
イ 質的な面では,事前,事後のテストの結果有効度指数がほぼ70以上であり,また,段階別割合でも,「3」以上の児童が80%以上に達した。
よって,仮説は有効であったと考えられる。
5 反省と問題点
(1)文,文章をふくらませる力が,どの程度ついてきたか,量的にも質的にも客観的に調べる方法がわからず,主観的な評価基準で評価してきたが,今後はさらに,信頼性のある評価基準を考えていく必要がある。
(2)事象を観察する観点はよく理解されたが,観察したことをすべて書こうとする児童も少なからずおり,「ふくらませる」ことと「ひきしめる」ことを対比させながら指導していかなければならない。
6 参考文献
○ 教育研究の実践 福島県教育センター
○ 教育研究法序説 福島県教育研究所
○ 小学校指導書 国語編 文部省
小学生の言語能力の発達 明治図書
○ 作文指導の体系化と創造的展開 明治図書