福島県教育センター所報ふくしま No.52(S56/1981.8) -024/034page
としてのはたらきかけについて考察を加えることにする。
注9三隅二不二氏は,集団機能の二つの次元である目標達成機能(Performance)と維持機能(M−aintenance)に着目したPM式リーダーシップ論を唱えているが,学校経営や教育実践の場に応用できるすぐれた考え方である。
表5は,このPM論の座標であるが,P軸は,集団や組織体における目標達成に指向したリーダーのはたらきかけであり,M軸は,集成の組織体の過程を維持,強化するリーダーのはたらきかけである。この二つの次元のはたらきかけの強弱により,座標において,リーダーシップの機能を測定しようとしたものである。
(集団機能の二つの次元) P次元 目標達成機能 (Performance〉 ○職務遂行中心的 ○仕事中心的 M次元 維持機能 (Maintenance) ○人間関係中心的 ○部下中心的注10実験の結果は,集団の生産性と部下の満足度ないしモラール相対的に最高であったのは,PM型であった。Pm型は,生産性においてはPMにつぐが,モラールは低かった。Mp型は,モラールはPm型ほど低くなかったが,生産性は低いことが実証された。そして,後に行われたフィールト・ワークにおいても,pm型が,相対的に集団生産が最も低く,かつ,モラールも最低であることが検証されたのである。
さて,このPM論をもとに,研修主任の役割やはたらきかけを,研修活動の展開されるプロセスにそって,P軸とM軸に分けて配列するとどうなるであろうか。注11杉山正一氏のまとめた研修過程の具体例を手がかりにしながら,先にあげた外的要因等を配列すると,次の表6のように表すことができるのではなかろうか。学校規模,学校の実情により,必ずしもこのように分けられない場合もあるが,ここで留意してほしいことは,P軸(職務連行・仕事中心)とM軸(人間関係中心)の両者のはたらきかけが調和を保つように,研修主任がコントロールすることである。
研修主任の任務を意識しすぎると,P軸に含まれる活動内容や外的要因に目をうばわれ,M軸のはたらきかけを忘れる結果となり,また,M軸に含まれる人間関係や職員の気持ちばかりに気をくばりすぎると,P軸の研修活動が停滞し,校内研修の目的が達成されない結果となる。
研修主任は,常にP機能とM機能の調和が図られるよう配慮しながら,研修活動を実践していくことが大切であろう。たとえ,だれが研修主任の立場に立ったとしても,上の表6のP機能とM機能の内容や要因をおさえながら,意図的,計画的に研修活動をすすめれば,研修主任のリーダーシップが生かされ,モラールの高い充実した校内研修が展開されるものと思われる。
〈参考文献〉
注1 「教育用語事典」第一法規
(「教師のモラールに関する調査」国立教育研究所)注2 「新しい学校経営の条件」学陽書房 原実著
注3 「研究主任の実務と事例」東洋館出版社 杉山正一著
注4 「研究紀要」大分県教育センター
(「学校経営の最適化に関する基礎的研究(I)」)注5 「学校教育の手引」―新版―
福島県教育庁義務教育課編注6 「リーダーシップの心理」日本図書 西岡忠義著
注7 「学校教育の手引」―新版― 前出
注8 「演習 学校の組織と運営」教育開発研究所 牧昌見著
「学校経営の課題と実践」教育開発研究所 伊津野朋弘著注9 「新しいり一ダーシップ」ダイヤモンド社 三隅二不二著
注10 「リーダーシップ」ぎょうせい 後藤敏夫著
注11「研究主任の実務と事例」東洋舘出版社 杉山正一著