福島県教育センター所報ふくしま No.53(S56/1981.10) -013/034page

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 「友人から万引きの話を聞いて自分もやってみたかった」・・・・・・願望を行動に表したもので,好奇心や被影響性が根底にあるタイプ
(4)集団力学型  父厳格・母過保護型
 「みんながやっているから」「誘われて断りきれずに,つきあいから」‥‥‥誘い,指示,強制等による同調参加のタイプ
(5)スリル快楽型  父・母放任型
 「見つからないかとドキドキしている気持ちがなんともいえない」「成功すると満足感や快感を覚える」・…‥非行の中に快適な刺激を求めるタイプ
(6)抑制力一時低下型  父・母放任型
 「盗む気はなかったが何となく」‥…・自制力が現場の状況,対物誘因性によって一時的に後退しているタイプ
(7)テスト重圧解消型  父放任・母過保護型
 「受験前でイライラしていた,八つ当たり的な気持ちでやった」「受験勉強から解放され,気分的に浮かれていた」‥…・過度な緊張や心理的重圧からの逃避・解放などが基盤となっているタイプ
(8)ストレス解消型  父・母厳格型
 「いやなことやイライラした気持ちをそらすため」……テスト以外の種々の原因により生じたストレスを万引きにより代償的に解消しようとするタイプ
(9)反抗・攻撃型  父・母厳格型
 「親や教師に対する八つ当たりのつもりで」・・・…家庭内での愛情・欲求への不満や学校の規則や教師に対する反発が基盤となっているタイプ
(10)生理型  父・母放任型
 「生理中で気分がイライラしていた」「気分的に動揺していた」・…‥生理的な要因が基盤となっているタイプ
4.指導に当たって
 ○最初に児童・生徒が非行へと進むときの内面の動きを考えてみたい。
  人間は本能として,食欲・性欲・集団欲を持っている。この場合、最も重要なのは集団欲である。集団の基本は家族であり,家族が互いに有機的な結合をして社会を構成している。
  個々の生徒が家族関係の中で,また身近に存在する社会としての学校生活の中で,集団欲が満たされないとき本能的に激しい怒りとなり,外へ向けての攻撃となる。また人間は本能的欲求を満たすだけでなく,自己の存在価値のもとに正常な活動をし生活している。
  自己価値感の低下・喪失の原因は家庭・学校での生活や,その他種々の場で生じた「みじめな気持ち」である。これに対し消極的に反応したときは,不安→えんせい→自殺 へと進む。不安な感情はだれしも時には持つものであり,特別異常でない場合には問題のないものである。えんせい段階に入ると自分の価値感を傷つける恐れのない人とは生活できるが,自分の価値感を傷つけるかも知れない人や,そのような社会では一緒に生活することがいやになり,学校ぎらいや登校拒否となって現れる。
 積極的に「みじめさ」を排除しようと行動するときには,周囲に向けて転嫁を図る行動にでる。初めは安心して攻撃できる相手として親や教師に対する攻撃が行われる。攻撃することによって自己価値感は一時的に高まり,「みじめさ」から解放される。このようなことは正常な児童・生徒にも見られるものである。
  さらに「やり切れない気持ち」になると,攻撃はもう一段外へ向けられ非行へと発展する。児童・生徒が積極的に排除行動に出たときは,暴力→非行→犯罪 へと進む。
○これらへの対応として,家族集団で問題となる,親子関係の疎遠,愛情飢餓,家庭からの疎外などが起こらないように,日常から好ましい親子関係を目指し,家族相互の連帯感を強め情緒的なつながりを深めてゆくことが大切である。
  学校においては,児童・生徒の正しい理解に努め,集団構成の一員として活動の場を準備し,自己の価値感を見い出し,充実感の持てる学校生活がおくれるように,全校的な取り組みで指導を進めてゆく必要がある。
  さらに,児童・生徒の生活行動面から,家庭・学校・地域社会が青少年健全育成の立場で相互信頼を深め,互いに協力し総合的な指導が展開されるように指導体制を強化していかなければならない。

〔註〕 女子非行  少年非行研究会編(参考)

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