福島県教育センター所報ふくしま No.53(S56/1981.10) -015/034page
"図2 YG性格検査における性格特性(Aタイプ,Bタイプ)
Aタイプは,D,T,N,、O,Co,G,、A,S の傾向が強い。つまり,自分のことをすごく気にし,ささいなことで気持ちを傷つけられ,自信が持てず意気消沈しやすい。また,人をあまり信用せず,自分から進んで話しかけたり友達をつくることが苦手な,対人的不安傾向の強い性格である。従って登校拒否の状態像は,Bタイプと比べ閉じこもりが強いと思われる。
Bタイプは,Aタイプと比較してD,C,Tの傾向はさほど強くなく情緒は比較的安定しており,Co、T,Aの傾向も小さく,閉じこもり、罪悪感がひどくない親和的な状態像をうらづける性格と思われる。
(2)親の養育態度
生徒の性格は,養育環境、特にどのような親子関係によって養育されてきたかということと関係がふかい。このことは,多くの研究から明らかである。そこで,登校拒否生徒の性格形成の背景をさぐるため,Aタイプ及びBタイプの登校拒否生徒の両親について,親子関係診断テストとエゴグラムから養育上の問題をまとめてみた。図3は,危険地帯と準危険地帯を集計し百分率を求め、グラフ化したものである。図4は、CP、NP、A、FC、ACの平均のグラフである。
養育態度に焦点をあててみると、Aタイプの母親と比較して、Bタイプの母親は、拒否的、干渉、不安、溺愛、盲従の傾向が強い。つまり、心配や取り越し苦労が多く世話をやき過ぎるなどの過保護や、必要以上に可愛がり、悪いことでも味方になるなど服従的なところがある。こういう養育態度から,生徒は,自己中心的で忍耐カに欠け,依頼心が強く,心身の発達が遅れ,不適応を起こす性格が形成されたと考えられる。
図3,甲研式親子関係診断テストからみた養育態度(Aタイプ,Bタイプ)
エゴグラムからは,Aタイプの親はBタイプの親と比較してうつ状態が強く,自分のわく組で物事に対処しやすい。このような違いが性格形成上大きな影響を与えてきたものと考えられる。
図4 エゴグラム(Aタイプ,Bタイプ)
3、おわリに
高校生は,子供から大人への過渡期,すなわち青年期こあたり,そこには親からの独立、自我同一性の確立(自分の存在を自覚し,また自分自身の統−と継続を認識することができること)等の課題も多く,適切に防御機制を働かすことができず,不適応に陥ってしまうものも少なくない。
登校拒否生徒の早期発見,早期治瞭たあたって,教師は生徒の情緒や自主性などの発達は十分かどうかについて、つね日ごろから見ぬく目を養っておくことが大切である。また高校生年代の若者が,いかに青年期の課題をのりきっていくのか、そのためには何ができていなければならないのか、さらに教師は生徒にどのような援助指導を行えばよいのかを,生徒が自らの力で成長することを全面的に信ずる立場で,生徒とともに考えていきたいものである。