福島県教育センター所報ふくしま No.53(S56/1981.10) -021/034page
研究プロジェクト状況報告 教 育 課 程 の 経 営
経営研究部 須 永 英 次
はじめに
当教育センターでは.学校経営改善関する研究の一環とLて、本年度より3か年の継続研究による教育課程の経営について研究をはじめた。教育課程の経営は学校経営の一部分を占めるものであり、特に重要な基本部分をなすものである。(安彦忠彦「教育学講座」)更に,新教育課程実施1年を経た現在(小学校)、教育課程経営上の諸問題や課題を明らかにし.改善・充実のための資料を提示することは最も要請されているところでもある。13名の当プロジェクトチームによる本研究の概要.ならびに、第1年次(小学校対象)の現在までの研究状況をここに紹介する。
1 研究の趣旨
小・中学校が新教育課程の実施を迎えたのを機に、教育現場においては、教育課程の実践的調査研究に積極的な取り組みがみられ、その改善・充実を図り.究極的には、学校教育の質的転換を目指そうとする動きがみられることは意義あることである。それは、「このたびの教育課程審議会の答申、学習指導要領の改訂に対応した,新しい教育課程経営への構想をもち.その具体化に取り組むことが、現在最も望まれているところであり,その成否は.個々の学校で特色ある教育課程経営をいかにうちだすことができるかどうかにかかっている。」(小林信郎「現代学校経営講座」)といわれているように、新教育課程の趣旨の実現から期待される主体的な学校経営の確立につながるものである。
近年.「学校経営は.組織自体の維持発展を図る内部機能であり.学校教育目標達成のための計画一実践一評価という一貫した連続性のある経営サイクルを通して.絶えず組織の改善を図る活動である。(県教育庁義務教育課編「学校教育の手引−新版」)という,経営学的視点からとらえようとする理解が深まるとともに.学校経営の中核としての教育課程についても.編成,実施、評価・改善という活動を一連のものとして、適切かつ効果的に行うという経営学的な問い直しが求められてきた。
当教育センターでは.昭和53年度より3か年にわたって.学校経営改善に関する研究の一環として.学校経営の実践面における評価の過程に着目した「学校経営評価」の調査研究を行ってきた。同研究の成果としてまとめた紀要第43号では、教育課程の経営についての実際を次のように述べている。「・・・…教育課程の編成過程についての各学校の実践は積極的であり,学校教育の向上に実質的な役割を果たしている。しかし.実施・展開面では惰佳に流されてしまう傾向が見られ.特に評価の過程においては.改善のきめ手となる十分な資料を得るためのきめ細かな評価活動はほとんど行われていないように思われる。すなわち、年度の計画過程にのみ全力を注いでも.実施一評価の過程をおろそかにしては,教育課程経営の質的な向上・充実は期待できない。‥・」
伊藤和衛氏は教育課程管理の現状について,著書「教育課程の目標管理」の中で次のように述べているが、このことは,前述の当教育センター紀要の指摘と同じとらえ方と受けとめられる。「‥‥・・おおまかにいって、教育課程の管理は、その計画管理.実施段階における授業管理,そして評価管理のどれひとつをとってみても、近代管理としてのマネジメント・サイクルに合致していないというべきであろう。即ち、計画と実施、実施と評価,評価と計画、これらの各段階にはそれぞれ深い断絶がある。従って,教育そのものが効率化しないわけである。……(中略)‥‥‥特に,教育課程の管理においては、評価管理が有効適切にはたらいていなければならないのに,学校管理の現実においては,この点が“ゼロ”にちかいといえるだろう。・‥」―同氏は「経営」と「管理」について、両者は理論的には分離しうる概念ではあるが.学校経営にそれがもち込まれた場合.「経営管理」として一語にとらえることが妥当であるとしている。
本研究を昨年度までの学校経営改善に関する研究―学校経営評価に関する研究―の一環としてとらえ、